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INTERVIEW(2)――東京でどうしたらいいかわかんない人たちの気持ち

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2011年06月29日 18:01

更新: 2011年06月29日 20:58

インタヴュー・文/金子厚武

 

東京でどうしたらいいかわからない人たちの気持ち

 

――今回はアジカンの新曲も2曲入っていて、まずはDisc-2の最後に収録されている“ひかり”についてお伺いしたいんですけど、この曲はあきらかに震災に対するリアクションとして書かれた曲ですよね?

後藤「震災の後すぐに実家に帰ったんですよ。静岡なんですけど、何にも持たずにフラッと帰って、3~4日いたのかな? それで、すぐに帰ってきて……関東に戻ってきた気分って、静岡と全然違っちゃってて。街の雰囲気も全然違うし、暗いし、スーパーとか行ったら物がないし、行列もできてるし。でも同時に〈こういうことって忘れちゃうのかな?〉とも思ったのね。歴史的に書き留められていかないんじゃないかって。年号とかは残るし、被災地とか原発とか大きい見出しは残っていくけど、〈東京でどうしたらいいかわからない人たちの気持ちってどうなっていくんだろう? 誰が書いていくんだろう?〉っていうのがあって。で、3月の終わりにアコースティックでライヴをやったんだけど、その日に歌う曲を書こうと思って“ひかり”を作ったんです」

――事件としての震災の記憶じゃなくて、そのときの感覚を覚えていたいっていう。

後藤「当時はTVのなかの風景を観ても、その広さってどれくらいなんだろうって実感もないし、深刻さだけは伝わってくるんだけど、かといって何ができるわけじゃない。ツテがあるわけでもないし、車もないし力もないし……って、みんな思ったと思うんだよね。そういうのを書き留めておくのって誰もやらなそうだなって思ったから。ミュージシャンは、どうにかして歌で元気づけようとかなると思うし、それは正しい脊髄反射っていうか、そういうものだと思うけど、でも圧倒的に届かない雰囲気っていうか、聴く環境すらないわけで、そういうのを考えたら、〈いま〉を書き留めておくしかできないし、それをやっておかないとダメだと思って。またみんなが元気になってきたら、それに合わせた曲も書けるようになると思うし」

――〈いま書いておくべき歌詞はこれなんじゃないか?〉っていう想いで書いた歌詞ということですね。

後藤「そう、だからコンピに入れたのも、いま出しておかないと、もう出すとこないんだよね。来年のいま鳴らしてもしょうがないっていう。現時点でもちょっと遅いかもしれない。ホントただのドキュメントなんだけど、〈こうだったんだよ〉っていうのを歌っとくのいいかなって思ったんだよね。スーパー行っても何もなかったんだよって」

――この視点で描く人はなかなかいないと思うし、後藤さんらしいなって思います。震災前から日常に対する意識の高かった人の歌だなって。

後藤「変かもなって思いながら書いてたけどね(笑)。もしかしたら、誰かに〈お前こういうときにこういうこと歌うなよ〉って言われるかもなってちょっと思ったんだけど、〈でもいいや、そう言われても〉って思って。俺にとってはすごく意味があるっていうか……難しいとこだよね。こうやって深刻に書いたりすることに対する逡巡みたいのもあるし、音楽なのに言葉でやり過ぎかなって気持ちもあるし。反面“All right part2”みたいな、言葉と音楽をミックスさせて楽しく戯れてるものにすごい魅力を感じて、ホントはこっちがやりたいんだけど、どうしても当時は引っ張られるところがあったっていうかね……そういうなかでも、なかだからこそ、何かを作んなきゃダメだっていう、気合いみたいなのがありましたね」

――“All right part2”は震災の前からあった曲だそうですが、でもいま〈オールライト〉って響くのはいいなって思います。

後藤「何の巡り合わせかわからないですけどね……〈オールライト〉って歌ったんだなって(笑)」

――この曲にはチャットモンチーの橋本絵莉子さんが参加されてますが、風の噂で聞いたんですけど、橋本さんが来たときのレコーディングだけメンバーが勢揃いしたとか?

後藤「それ、もう都市伝説化してますけど……ホントなんですよ。メンバーだけじゃなくて、スタッフ一同勢揃いしたっていうのがイラッとくるところですよね(笑)。いつもは僕とディレクターと、マネージャー2人が後ろで打ち合わせしてたりするぐらいなんですけど、そのときは〈みんないるなあ〉っていう。普段、歌録りのときは来なくていいよって僕が言ってるっていうのもあるんですけどね。来てもらってもすることないっちゃないから、ボーっとしてるんだったら練習しなよってことは常々言ってるんで、逆に、そう言ってるにも関わらず来たことに対するいら立ちも(笑)。普段は従順に俺の言いつけ守って来ないのに」

――その言いつけを破ってまで(笑)。

後藤「さも〈普段から僕ら歌録りもいるんですよ〉みたいな感じで、えっちゃん(橋本)もそう思って帰ったと思うんですよ。〈アジカンさん、みんな歌録りもいて、平和〉みたいな。それがホントに……イライラしますよね(笑)」

 

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