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特集

ON THE RIGHT TRACK――(1)

 

生の力に溢れた厳選ディスク

 

1. JOHN LEGEND & THE ROOTS 『Wake Up!』 G.O.O.D./Columbia(2010)

ヒップホップ全盛以降のシーンに生音感覚を持ち込んだルーツと、シンプルな歌の魅力を再認識させてくれたジョン・レジェンドとの画期的なコラボ。70年前後に放たれたメッセージ性の高いソウルを、原曲のグルーヴを損なわず現代感覚でリメイクするという崇高で挑戦的な試みは、この両者だからこそ成し得たものと断言したい。*林

2. ERIC BENET 『Lost In Time』 Reprise(2010)

前作の成功で得た資金をもとに、自身が憧れる70年代のフィリー・ソウルなどを、生楽器をふんだんに使って再現してみせた逸品。管弦の華やかで美しい響き、エレキ・シタールの艶めかしい音色など、リッチでまろやかな生音に身も蕩けそうになるが、それに見合うだけの圧倒的なヴォーカル・スキルを備えたエリックがとにかく凄い。*林

3. BOOTSY COLLINS 『Tha Funk Capital Of The World』 Mascot(2011)

ファンク・ベースの帝王による新作は、ソウル、ジャズ、ヒップホップ、ラテンなどの各界からゲストを招き、本人のブーティーなベースを軸にそれらを繋いだ黒人音楽絵巻的な内容。Pファンク曲などのフレーズも飛び出すが、何より楽器演奏の醍醐味や必要性を後世に伝えていこうとするブーツィの気迫と使命感に心打たれる。*林

4. ALOE BLACC 『Good Things』 Stones Throw(2010)

クールでジャジーなヒップホップ・サウンドを纏う印象をガラリと変え、アーシーなソウルを歌った2作目。モダン・ヴィンテージなサウンドを担うNYのトゥルース&ソウルと組み、エル・ミシェルズ・アフェアによる南部めかした演奏へ味のある歌唱を染み込ませていく。小粋なソウル・ショウといった来日ライヴも話題に。*池谷

5. SLY JOHNSON 『74』 Emarcy(2010)

ヒューマン・ビートボックスの達人でもあるフランス人シンガーによる古風にして未来志向のソウル盤。ソウライヴ、TM・スティーヴンス、シンディ・ブラックマン、ラリー・ゴールドら、国境を越えたセッションでもお馴染みの名演奏家たちがスライの〈ナマ志向〉に応えた快作で、オーティス・レディング曲のカヴァーもお似合いだ。*林

6. BLACK JOE LEWIS AND THE HONEYBEARS 『Scandalous』 Lost Highway(2011)

MG'sや初期バーケイズが粗削りなロック編成で帰ってきたような、オーティスの代役でミックが張り切ってるような、毛穴の開くソウルフル・ロックンロール。ニヤリとさせられる意匠も忍ばせつつ、濃さも薄さもそのままズルムケで曝け出した陰影の深さと泥臭さがヤバい! *出嶌

7. MINT CONDITION 『7』 Shanachie(2011)

生粋のバンドマンである彼らにしてみれば、生音もライヴ・グルーヴも何をいまさらと言ったところ? 集団のダイナミズムからムーディーな伴奏まで、バンド演奏の粋を極めた5人の最新作。時折ラファエル似にもなるストークリーの美声が、厚みのあるスタイリッシュな円熟を黒光りさせる。*出嶌

8. SOLOMON BURKE & DE DIJK 『Hold On Tight』 Blue Wrasse(2011)

オランダのバンドを従えたキング・ソロモンの遺作。説得力に溢れたキャリア50年超の歌唱と熟しまくったキャリア25年超の演奏が優しい表情で向き合う姿からは、年輪云々で片付けられない意気がこぼれ落ちる。寄り添うようなデ・ダイクのバッキングの渋さ加減も絶妙。*出嶌

9. 近藤房之助 『黒くなれ』 Pヴァイン(2011)

燻し銀の歌声を研ぐブルースマンが、45ことSWING-Oの仕切りで後進プレイヤーたちを迎え撃った画期的なドス黒盤。ブルース・ホーンズビー“The Way It Is”やリトル・ビーヴァー“Party Down”などの選曲もいいが、そのなかで若い躍動を滾らせた鍵盤のプレイが光る。*出嶌

 

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2011年06月01日 17:59

ソース: bounce 332号 (2011年5月25日発行)

ディスクガイド/池谷昌之、出嶌孝次、林 剛

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