こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

our beautiful nightmare 2011

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2011年03月09日 17:59

更新: 2011年03月09日 18:37

ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)

文/編集部

 

「いやいや、凄いことになってきてるね、グローファイ/チルウェイヴが」

「ちょっと遅くないですか? 少なくとも去年の段階で流行語大賞みたいな感じになってたキーワードですよ」

「そうか。しかし例の新語・流行語大賞が〈ゲゲゲの〉って言われてもねえ。どんなシチュエーションで使うのか教えてほしいよ。せめて〈ちょっこし〉にしてほしかったね」

「そういう話題も古いんでやめてください。で、一応言い訳をしておくと、CDで入手できなかったりタワレコで流通してなかったりするものが多くて、一度はこのジャンルの特集を見送った経緯があるんですよね」

「まあ、ジャンルというよりは〈用語〉というか、かっこいいタグみたいなもんだよね。そういう意味では、言葉の鮮度自体は薄れても、たくさんの人がその界隈のものをあれこれ選んで聴いたりできるのはまだこれからってこと?」

「まあ、いわゆる最先端じゃないのでしょうけど、一定のラインナップからいろいろ選べる状況は整ってきたんじゃないでしょうか」

「最先端ねえ。仕事中にネットで関係ないものばっか見てるキミみたいな人じゃないと……なかなか追うのは難しいけどね。まあ、それはそれとして、そもそもはこの記事にもあるように〈Pitchfork〉発信のキーワードなんだっけ。〈グロテスクなローファイ〉だと思ったら違ったんだな」

「そういうのももういいです。僭越ですが、もうちょっとネットとかチェックしたほうがいいですよ」

「がんばるよ。でも、こういうムードに格好良い名前を考えて付けた人は偉いと思うわ。ウォッシュド・アウトもどこかで聴いたことがあると思ったらキツネのコンピに入ってたんだよね。XX以降の感じって何なんだろう?とか思ってたから、タグで括ってくれるのは、その雰囲気が気に入った人にすれば単純に道標としてありがたいよ」

「こういうキーワードはおもしろがったほうがおもしろいですからね。聴く側が分類に縛られなければいいだけです」

「ネーミングと言えば、こないだ推薦されたウィッチ・ハウスものとかさ、言葉のイメージだけだとシェールみたいな魔女が出てくるハウスかと思ったら全然違うのね」

「イーストウィックですか」

「凄いかっこいいなと思ったんだけど、スクリュード・エレポップみたいな感じだよね。DJスクリューとかインディー時代のスリー6マフィアとか好きな人は聴いてみるといいわ。セーラムとかは聴いたら好きになる人が多い気がする」

「ハイプ扱いして聴かないのはもったいないですね。実際にウィッチ・ハウスは〈クランク・シューゲイズ〉とか呼ばれてて、ヒップホップからの影響も大きいって言われてます」

「誰が言ってたの」

「みんなが」

「どこの?」

「ネットの」

「それが?」

「最先端」

「いや、そういう行数稼ぎはもうやめようよ……で、今回の特集は〈ダブステップ以降〉のあれこれ、ということだね。あんまりそのものの話にするとまたCDで出てないものも多くなってくるからアレだけど」

「経緯は別として、グローファイも〈ダブステップ以降のインディー・ロック〉だと捉えることもできるので、そういう感じですね。いずれにしても明確な定義付けじゃなく、ぼんやりしたムードですから、いまそのタグが付いていないいろんな音楽のなかに、このムードは確実に流れ込んでいるはずですよ。私はS.L.A.C.K.が自分で作ったビートにそういう空気感を感じたりもしましたし」

「ドレイクの内省的な空気感とかも近い気がするな。まあ、正解のある話じゃないと思うけど……」

「ジャンルっていうと仕分けのポイントがハッキリしてそうですけど、ムードの話なので解釈とか雰囲気の感じ取り方も人それぞれってことですね」

 

▼関連盤を紹介。

左から、XXの2009年作『XX』(Young Turks)ドレイクの2010年作『Thank Me Later』(Young Money/Cash Money/Universal)

インタビュー