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特集

〈KAAT〉神奈川芸術劇場

カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2011年03月04日 19:46

更新: 2011年03月04日 20:19

ソース: intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)

text:片山杜秀

1月にオープン!〈KAAT〉神奈川芸術劇場注目の3作品

『Kappa/或小説』
『杉本文楽 木偶坊 入情 曾根崎心中 付り観音廻り』
人形劇俳優たいらじょう『はなれ瞽女おりん』

 

●みんな逃亡志願者だ!

みなさん、私はS病院の22号患者であります。芥川龍之介の小説『河童』の主人公、23号患者は私の隣人です。23号は河童の国を旅したと称して河童の話ばかりするので、正気を失ったと思われ、いまは私の仲間ですが、彼の正体は実は芥川龍之介君その人なのであります。みなさんは、芥川君が昭和2年7月24日に自殺したと信じておられるでしょう。でも、彼は既に河童の国で人魚の肉を食べていたので不死身になって死にきれなかったのであります。

そして私のもう片側の隣人の21号患者は徳兵衛君で24号はおりんさんです。徳兵衛君は近松門左衛門の『曾根崎心中』に描かれた現実の情死事件の一方の主人公です。実はいまだに死にきれておりません。
おりんさんは水上勉さんの小説『はなれ瞽女おりん』の主人公で架空の人物と思われておりますが、芥川君の隣の部屋に実在しております。日頃親しくしている私が申すのですから間違いありません。

さて、21号の徳兵衛君と23号の芥川君と24号のおりん君には、仲間の私から見て明らかに共通点があるのです。3人は揃って逃亡志願者であります。いつも逃げ出したくてうずうずしている。向こう側に行きたい。脱出の旅人です。

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