小林太郎のサウンドに含まれるロック成分をじっくり分析!
まだ20歳というだけあって、小林の音楽の原体験は2000年代に活躍した日本のギター・ロック・バンドのようだ。BUMP OF CHICKENやELLEGARDENといった名前が浮かぶが、なかでも4つ打ちの“ユニヴァース”にはASIAN KUNG-FU GENERATIONが“センスレス”でやっていたアプローチに通じるものが感じられる。また、彼のドスの効いたヴォーカルやヘヴィーなギター・サウンドからは、ニルヴァーナやアリス・イン・チェインズといったグランジ勢、ヘヴィーなリフを多用しているところからはレッド・ツェペリンやブラック・サバスといったハード・ロック/ヘヴィー・メタル勢との共通項も。さらにガレージやブルース・ロック的な側面では、そのぶっきらぼうな歌い方からもミッシェル・ガン・エレファントの影響があるのかもしれない。
その一方で、王道とも言えるポップなメロディーを得意とする小林が尊敬するのは、Mr.Childrenやサザンオールスターズといった大御所だという。その作曲能力の高さや長く続けていく姿勢に憧れているそうだが、なかでもスピッツのポップかつロックな立ち位置が好きだと語っている。確かにフォーキーでメランコリックな“サナギ”からはスピッツ節ともいえるムードが。そして、人間の暗部を描いた歌詞をヘヴィーなギター・サウンドに乗せつつも、メロディーはしっかりポップという点はsyrup16gに近いと思うし、最近のバンドではハード・ロック寄りのバンド・サウンドとエモーショナルな歌謡曲風のメロディーを持ち合わせたJeeptaにも通底するのでは。何はともあれ、やっぱり彼はバンド気質のソロ・アーティストなのだ。
▼関連盤を紹介。
左から、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの2006年作『ファンクラブ』(キューン)、ニルヴァーナの91年作『Nevermind』(Geffen)、ミッシェル・ガン・エレファントのベスト盤『THEE GREATEST HITS』、スピッツのニュー・アルバム『とげまる』(共にユニバーサル)、syrup16gのベスト盤『動脈』(DAIZAWA)、Jeeptaの2010年作『革命エントランス』(pure:infinity)
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