モーモールルギャバン
2000年代の京都に突然変異で現れた〈ミュータント・ディスコ〉ことモーモールルギャバンは、関西ゼロ世代周辺とは絡まずにひたすら全国ブレイクを目標にライヴを重ねまくった結果、ようやく実を結んできた。代表曲“パンティー泥棒の唄”さながらに自身のパンツを投げる、精神的にも肉体的にも露出狂癖のあるリーダー=ゲイリー・ビッチェのステージングは何かと物議を醸しているが、パンク、ジャズ、ファンク、ディスコなどを混在させたその音楽性はかつてのノー・ニューヨーク周辺~ZE周辺の持つファットなコンフューズドぶりにも似ていて相当クォリティーが高い。ヴォーカルとドラムスを兼ねるゲイリーをはじめとしたギターレス・トリオという編成も個性的で、演奏面ではそのイビツさが爆発力に繋がっている。
一方で、もともと路上で弾き語りをしていたというゲイリーによる歌詞は脳内マスターベーション状態の自己告白的なものが多数。奇妙に詩情が入った表現にはホロリとさせられたりもするが、自分という存在を何としても世に知らしめたいと願うような目線は実にしたたかだ。一歩間違えば建物に車ごと突っ込みそうなメンタリティーを、銀杏ボーイズに影響を受けたというゲイリーが音楽家としての自負によってギリギリのところでバランスを取った危ういバンドだ。ジャケットのアートワークをアジカンなどでお馴染み中村佑介が担当しているところなどは、J-Popのど真ん中をめざすこのバンドらしくて良い。
▼モーモールルギャバンの作品を紹介。
2009年作『野口、久津川で爆死』(BOUNDEE)
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