OKAMOTO'Sがこれまでにカヴァーした名曲案内
ビートルズやストーンズの初期のアルバムには必ずリズム&ブルースやブルースのカヴァー曲が収録されていた。持ち歌が足りないということではなく、自分たちのルーツへの敬意であり意思を受け継いだ表明であり、リスナーに伝えていくための使命でもあった。おそらくOKAMOTO'Sの場合も同じだろう。
今回のニュー・アルバムにも、エアロスミス(ここではランDMCヴァージョンらしい)“Walk This Way”、ゆらゆら帝国“美しい”、ジョー・ジャクソン“One More Time”の3曲を収録。いずれも原曲に忠実なアレンジなのが特徴で、これまで取り上げてきたものもコピーさながらに奇を衒わず、ストレートに解釈したものばかりだ。
「ツアーの時、移動の車とかで聴いて盛り上がったり。ジョー・ジャクソンなんかはそうでしたね。あと、今回のアルバムの方向に合っていると思ったので取り上げました。今回はひとり100曲(!)くらいづつ持ち寄ったんですけど、最終的には僕の意向が通っちゃいました(笑)」(レイジ)。
「僕らはこういうのが好きだから、みんなにも聴いてほしいって思いがある。だからあまりひねらないでやるんですよね」(ハマ)。
前作『10'S』収録のザ・フー“The Kids Are Alright”、ルースターズ“恋をしようよ”、リンク・レイ“Run Chicken Run”も原曲に忠実。さらに昨年発表した自主制作限定盤『COUNT 1000 EP』にはザ・ダイナマイツ“トンネル天国”を収め、また音源には収録されていないがライヴでは村八分“あッ!!”やソニックス“The Witch”、MC5“Kick Out The Jams”なども積極的に演っている。いずれも彼らの感覚からあまり飛躍しない素直な演奏が印象的で、決してマニアックには走らずポピュラーなものを選ぶ選曲の基準にも好感が持てるところだ。つまり、OKAMOTO'Sは昔ながらのロックンロールの定番を重要視し、それをわかりやすく伝えていこうとしている のかもしれない。
「いつか同時代のアーティストのカヴァーもやりたいですね。それこそビートルズとストーンズはお互いにカヴァーし合ったりしてましたから」(レイジ)。
多数のイヴェントに出演していることもあり、対バン数の多さではトップクラスと言えるOKAMOTO'S。そうした出会いからも彼らはカヴァー曲のチョイスを窺っているのかもしれない。
▼関連作を紹介。
左から、ランDMCの86年作『Raising Hell』(Arista)、ゆらゆら帝国の2007年作『空洞です』(ソニー)、ジョー・ジャクソンの79年作『Look Sharp!』(A&M)、ザ・フーの65年作『My Generation』(MCA)、ルースターズの80年作『THE ROOSTERS』(コロムビア)、リンク・レイのベスト盤『King Of THe Wild Guitar』(Ace)、ザ・ダイナマイツのベスト盤『ザ・ダイナマイツ〈COLEZO!〉』(ビクター)、村八分の73年のライヴ盤『LIVE』(エレック)、ソニックスの65年作『Here Are The Sonics』(Etiquette/Ace)、MC5のベスト盤『Anthology 1965-1971』(Cleopatra)
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