桃月庵白酒×広瀬和生(2)
広瀬:ところで、新しいCDが出るんですね。今回収録している「井戸の茶碗」も「短命」も、白酒さんならではの演出をされていますが、「井戸の茶碗」はどなたから習ったものですか?
白酒:うちの師匠(五街道雲助)です。私の大師匠にあたる先代・金原亭馬生から習ったとおりのかたちでやってみせてくれるのですが、「ここはこう言っているけど、こうでもいいよな」などとちょっとしたことを言ってもらえる。それが、こうすれば面白いかも、というヒントになるんですよね。
広瀬:「短命」はどなたから?
白酒:(三遊亭)愛楽さんです、ネタの交換をして、僕が「代書屋」を教えて、代わりに「短命」を教わりました。
広瀬:五代目(三遊亭)圓楽師匠の「短命」は最高に面白かったですものね。僕は圓楽師匠の一番のネタは「短命」だと思っているんですよ。よく言われる人情噺ではなくて。白酒さんの「短命」は、寄席で聞いたのが最初で、ああこれは圓楽師匠の流れの「短命」だなあと思いましたよ。初めて白酒さんのやり方の「短命」を聞いたときには、やっぱりこの人はすごいな、と思いましたね。白酒さんの「短命」は観るたびに面白さが増していて……
白酒:一時はいろいろとやり方を変えてやってみていました。やっていてすごく楽しいんです。
広瀬:今回のCDに収録する演目は、どのように選ばれたのですか?
白酒:特にこの演目を録りたい、というのはなかったんです。いくつもの高座を録音してもらい、出来と会場の雰囲気がよかったものを選びました。
広瀬:白酒さんの最近の演目の上位ではないチョイスで、ちょっと意外な感じがしたから、何か訳があったのかな、と思ったんですが。
白酒:何もないんです。申し訳ない。
広瀬:白酒さんは、いつもマクラが楽しいですが、今回もいいですね。電車に乗っていると、なぜか自分の周りでいろいろある、と。
白酒:なんだか電車の中って、イラっとくることが多い。それをマクラで話すのは、同調してほしいのかな。でも言い方には気をつけるようになりました。前はもっとストレートに怒りを出していたんですが、そこまで言うとお客様が、そうだけど、そこまで言うなよ、みたいな感じでひいてしまうから。
広瀬:でも求められてもいますよね。
白酒:何も言わないと、今日はおとなしいですね、って言われちゃう。のべつ怒っているわけじゃないんですけど。マクラをあっさりやってネタに入ると、今日はさっぱりしていましたね、って。噺はちゃんとやっているのにね。
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