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特集

GRASSROOTS OF A BROWN PUNK――トリッキーのミクスチャーな音楽性を育んだルーツを検証!!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2010年10月06日 18:02

ソース: bounce 325号 (2010年9月25日発行)

文/出嶌孝次

 

マーヴィン・ゲイのサイケ・ナンバー“That's The Way Love Is”をスロウに用いた“Aftermath”で登場してきたこともあって、トリッキーのバックグラウンドに往年のソウルやルーツ・レゲエ、ジャズなどの濃密な影響を嗅ぎ取ることはそう難しくない。マイケル・ジャクソンやコモドアーズのかなり明快なネタ使いもあれば、サラ・ヴォーンらで知られるスタンダード“Black Coffee”をカヴァーしたこともあるし、それらの延長線上でアイザック・ヘイズの“Ike's Rap II”やESGの“Moody”をサンプリングしていたのもヒップホップの素直な血を感じさせる行為だろう。

その一方で、ファースト・アルバム“Pumpkin”ではスマシング・パンプキンズをサンプリングしたり、後にニルヴァーナの“Something In The Way”をカヴァーしたり、衒いなくカテゴリーを横断してみせるセンスもトリッキーの大きな魅力であって、それは本文にもあるような育ちによって形成されたセンスなのだろう。そんな嗜好の表れをカヴァー/サンプリングという具体例で追いかけてみると、ニアリー・ゴッドでデペッシュ・モード“Judas”やスージー&ザ・バンシーズ“Tattoo”を取り上げたのを皮切りに、『Blowback』ではユーリズミックスの“Sweet Dreams(Are Made Of This)”をネタ使い。さらに『Vulnerable』ではキュアーの“The Lovecats”とXTCの“Dear God”をカヴァーするなど、80年代にマイクを握りながら青春を送ったブラウン・パンクのまた異なる一側面が浮かび上がってきて妙に興味深いのだ。それどころか『Knowle West Boy』ではカイリー・ミノーグ(の往年の曲ではなく!)ゼロ年代ヒット“Slow”をカヴァーしたりしているのだから、何だか可愛らしいじゃないか。いずれにせよ、こうした柔らかい感性がトリッキーの音楽像を完成へと導いたのは間違いない。

 

▼関連作を一部紹介。

左から、マーヴィン・ゲイの69年作『That's The Way Love Is』(Motown)、サラ・ヴォーンのベスト盤『Gold』(Verve)、ESGの編集盤『A South Bronx Story』(Universal Sound)、ニルヴァーナの91年作『Nevermind』(DGC)、XTCの86年作『Skylarking』(Virgin)、デペッシュ・モードの83年作『Some Great Reward』(Mute)、ユーリズミックスの83年作『Sweet Dreams』(RCA)、カイリー・ミノーグの2004年作『Body Language』(Parlophone)

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