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commmons schola: 「音楽の学校」夏期特別講座(2010.7.23)より

カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2010年10月04日 19:03

更新: 2010年10月05日 16:04

ソース: intoxicate vol.87(2010/8/20発行)

坂本:一口に、なんで音楽を聴くかとか、音楽から何を得るかといっていても、簡単に一言で答えられるものではなくて、知的な喜びもあるし、もちろん音楽は聴かなきゃ始まらないから感覚的喜びもあるし、またそれは個人によっても関心の持ち方は違うし。非常に学級的な方もいらっしゃるし。

小沼:ひとついえるのは、なんとなくBGM的に聴いているというのと、それだけを聴くというのはまったく違うと思うんです。本を読む、映画でもなんでもそうなのかもしれませんが、ストーリーだけ追うっていうのと、俳優の表情をみたりとか、写っている景色とか色合いを見ていくとか、そういうことでも違ってくるのと同じで、音楽もなんとなく流れがあって、歌詞の意味が断片的にでもわかってその効果としてのものを聴くのと、音色であったり、ベースラインがどうのとか、そういういろいろな、実はミュージシャン、作り手は結構こらしているわけです。そういうものを聴くかどうかでも大分違ってくると思うんです。

坂本:そうですね。僕今はニューヨークに住んでいるんですが、その前は当然日本にいたわけですが、二十歳頃に皆運転免許を取りますよね。お二人は?

小沼、浅田:持っていません。

坂本:僕も持っていなかったんです。あえて。というのは、車に乗ると、音楽が聴きたくなるじゃないですか。でも僕音楽を聴くと眼をつぶってしまうんです。(笑)なので、二十歳の時に、周りはみんなとっていたのですが、自分がとると自分が死ぬか、人を轢いてしまうかどちらかなので、免許を取るのをやめようと思ったわけです。ところが、アメリカにいったら車社会なので、当時タバコをすっていたんですが、タバコを買いにいくのも車がないと、というところが多いわけです。これは下駄代わりだなと。そう思って、免許をとりました。なるべく眼をつむらないようにしていますけどね。(笑)

浅田:いやいや、だからね、音楽というのが関係性の発見だとしたら、坂本さんは本当に地理感覚がめちゃくちゃ良いと思うんです。ニューヨークでタクシー・ドライバーできるって言っていたでしょう?

坂本:ニューヨークだけじゃなくて、パリでもローマでも、ベルリンでもできそうな気がするんです。土地勘がいいんです。

浅田:多分それは、音の関係を発見するのといっしょで、ある種のグラフィックな関係性みたいなものを把握する、その中で自分が体ごとプレイする。場合によってはピアノを弾くことなんだけれども、場合によっては車を運転するだと。だからまあ、食いっぱぐれたら、タクシーの運転手をするというね。(笑)

坂本:有名なまだご存命の現代音楽の作曲家でフィリップ・グラスさんは、もともとニューヨークのイエロー・キャブのタクシー・ドライバーでしたね。そうね。知らない、初めていったところでも、どこどこの駅は多分こっちだろう、というとたいてい当たりますね。
まあ、それはいいとして、音楽からはとてもたくさんのことを僕なんかは授けてもらっているし、知的な刺激も受けているし、単なる感覚的な快楽だけではなくて、少し頭も使うとおいしさも倍増する、面白さも倍増していくわけですよね。

浅田:だからなんていうかな、逆に言うと、関係の発見、あるいは関係の形成だという意味ではとても数学的なものなんだけれども、しかしそれは身体的にいきられるものなので、iPodなどで、何かをやりながら聴いているというのも悪くはないんだけれども、単に情報として音楽を聴くというのだけではなくて、なにかコンサートとかにいって、集中する。あるミュージシャンをいろいろな人たちといっしょに共通でひとつの経験として聴くというのは、すごく大事なことだと思うんです。やはり情報に換言されない経験ということがあって、例えばこの場所でも、「なんだいあいつら、だらだら話しやがって」と思う人もいたり、面白いなと思っている人もたまにはいたり。そういう経験を共有するっていうことが、情報をこえて大事なことなんじゃないかな、と。音楽は最終的にそういうことがないと駄目だなと思います。

坂本:まったくその通りです。もうひとつはね、僕の個人的な興味なのかもしれないのですが、大げさに言ってしまうと、人類学的興味というかな。そういう面白さもあるんですよね、音楽には。

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