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特集

ジョン&ルーツのレジェンドなルーツ――(3)

 

MIKE JAMES KIRKLAND 『Hang On In There』 Bryan(1972)

マーヴィン・ゲイの『What's Going On』を模したようなニュー・ソウル裏名盤の表題曲で、疲弊した同胞を穏やかに励ます“Hang On In There”も“Wake Up Everybody”と同じ効用を持つ曲だ。アグリー・ダックリング“I Did It Like This”ネタとしても有名だが、ジェイムズ・ギャドソンらによるタイトでブルージーな演奏にクエストラヴらが惚れ込んだことは容易に想像がつく。

MARVIN GAYE 『What's Going On』 Motown(1971)

マーヴィンの歴史的名盤のなかでもとりわけ静かな、祈りにも似たゴスペル曲“Wholy Holy”を取り上げたのは、ジョン・レジェンドが教会育ちであることとも関係しているのだろう。平和を願うこの曲をマーヴィンと書いたのは、“What's Going On”と同じレナルド・ベンソンとアル・クリーヴランド。アレサ・フランクリンもゴスペル実況盤『Amazing Grace』で披露した。

BILL WITHERS 『Live At Carnegie Hall』 Sussex(1973)

ビル・ウィザーズがこのライヴ盤で初披露した“I Can't Write Left Handed”は、ヴェトナム戦争終結前に、右腕を失った帰還兵の立場になって書かれた静かな反戦歌だ。ゆえに2008年の大統領選の最中に企画されたという今回のカヴァー集で取り上げられたのは必然だったのかも。〈語る〉曲だけに、詩人のカール・ハンコック・ラックスも反戦の意を込めてカヴァーしていた。

NINA SIMONE 『Silk & Soul』 RCA(1967)

公民権運動に触発されたプロテスト・ソングも数多いニーナ・シモン。これもそのひとつで、邦題通り〈自由になりたい〉と歌われる“I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free”が取り上げられたのは、彼女が他界した際、〈Okayplayer〉が真っ先に哀悼の意を表明していたことからも納得がいく。ハリケーン・カトリーナの後にはアーマ・トーマスがカヴァー。本当の自由はまだ先にあるのだろう。

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2010年09月22日 17:59

ソース: bounce 325号 (2010年9月25日発行)

ディスクガイド/林 剛

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