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LATIN BEAT FILM FESTIVAL 2010(3)

カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2010年09月10日 21:28

更新: 2010年09月10日 22:02

ソース: intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)

text:長屋美保

今回の映画祭で上映されるのは、どれも興味深い作品ばかりだが、必見なのがメキシコ革命100周年を記念して制作された『レボリューション(REVOLUCIÓN)』。プロデュースは、メキシコを代表する俳優、ディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナルで、今年のカンヌ映画祭でも上映され話題を呼んだ。メキシコでは、革命の始まった日付に合わせ11月20日頃より公開予定なので、本国よりも一足早い日本上映となる。

メキシコ革命をテーマに10人の監督による短編で構成されるオムニバス形式の作品で、参加監督にはディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナル、2007年カンヌ映画祭で審査員賞を受賞した『静かな光(LUZ SILENCIOSA)/第5回LBFF上映作』の監督=カルロス・レイガダス、作家ガルシア・マルケスの息子で、コロンビア生まれメキシコ育ちのロドリゴ・ガルシア(『パッセンジャーズ』『美しい人』)が。さらにメキシコの若手監督たちが健闘しているのに注目だ。

フェルナンド・エインビッケ(『ダックシーズン』)の『ようこそ(LA BIENVE-NIDA)』は、モノクロの詩的な映像で、田舎町のブラスバンドが、いっこうに現れない「何か」を迎えるために待ち続けるシュールな作品だが、その不条理さはメキシコ社会そのものを表している。パトリシア・リヘン(『同じ月の下で(LA MISMA LUNA)』/第6回LBFF最優秀映画賞受賞作)の『愛しの美しき故郷(LINDO Y QUERIDO)』は、メキシコの民衆のために闘った革命戦士の家に生まれながらも、祖国を追われるようにしてアメリカ合衆国へ移民してきた一家の、メキシコへ込められた愛を描き、ほろりとさせられる。マリアナ・チェニジョ(『CINCO DIAS SIN NORA』)の『LA TIENDA DE RAYA』は、革命前の時代に、荘園で地主が労働者にその敷地内でしか使えない手形を発行していたシステム同様に、現代メキシコにおいても、米資本の大型スーパーマーケットが、従業員にその店でしか使えないクーポンをボーナス代わりに支給するような状況を描いている。アマ・エスカランテ(『よそ者(LOS BASTARDOS)/第6回LBFF上映作』)の『吊るされた神父、ニコラス(EL CURA NICOLÁS COLGADO)』は、革命時代とおぼしき荒野で、ロバにのった幼い子供たちが、木に吊るされた神父を助け、そのキリストの教えを信じられなくなった神父とともに、新天地を目指して彷徨うのだが、実は現代に繋がっていて、そこではますます厳しい現実が待っているというシニカルな作品。ロドリゴ・プラ(『ゾーン(LA ZONA)』)の『30/30』は、パンチョ・ビジャの孫である男性が、革命記念式典に出席のため地方都市に呼ばれるが、人々は革命のことなどすっかり忘れているし、男性はただ政治家のイメージ作りのために利用される災難を描いている。

すべての作品に共通して言えるのは冷静な視点であり、革命を美化するようなものではない。「確かに100年前に革命は起こった。だが、その後の状況は今も昔と実はあまり変わっていないのではないか」という問いかけがこの作品群のなかにある。

『レボリューション』

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