DO YOU KNOW WHAT I MEAN?――本人が解説する、〈言葉にならない〉くるりの音楽嗜好とは?
「小さい頃から耳に入っていた〈祇園囃子〉、夏になると絶対聴きたくなるんです。だからたまにCDで聴きますよ(笑)。あと、“竹田の子守唄”とか。YouTubeで観て久々に感動して泣きました」(岸田)。
新作に収録されている“東京レレレのレ”を聴くまでもなく、岸田のルーツに日本人的な情緒があるのは間違いないところだろう。だが、彼はソウル・フラワー・ユニオン“満月の夕”、THE BOOM“島唄”などを好例として挙げつつも、「でもジャンルとしての民族性で聴いているのではない」と念を押す。
「ルーツ音楽に対する〈勘違い解釈〉から来るような音楽が好きなんですよね。ヴァン・モリソンの『Astral Weeks』なんか、黒人音楽よりもある意味ソウルでしょ。しかも歌に力がありますよね。あとエンケン(遠藤賢司)さんとかを聴くと、土着性みたいなものが根っこにあるのにどこかふざけてる。そこがいいですよ。ハラカミさん(rei harakami)もそうやけど、よく出来たユーモアのある音楽ってことやと思うんですよね」(岸田)。
「僕はフォーク・クルセダーズの『紀元弐千年』とかが好きですね」(佐藤)。
決して洗練されない、どこかに泥臭さを残しつつヒューマンで人間力のようなものがあるウィットに富んだ音楽。「毎年〈音博(京都音楽博覧会)〉に出てもらうアーティストを決める時もこういうことを考える」という岸田だが、いまのくるりはそういう自分たちの〈言葉にならない〉音楽指向を、みずからの作品を通じて明確に伝えていけるだけの表現力とバックボーンを備えている。
「今回の僕らのアルバムって、〈言葉のアルバム〉やと思っているところもあるんです。ずっと言葉をちゃんと伝えようとしている音楽に惹かれているっていうのも影響してるかもしれないですね」(岸田)。
▼関連盤を紹介。
左から、京都長刀鉾囃子保存会『BEST SELECT LIBRARY 決定版 祇園囃子~長刀鉾~ベスト』(キング)、ヴァン・モリソンの68年作『Astral Weeks』(Warner Bros.)、遠藤賢司の70年作『Niyago』(URC/ポニーキャニオン)、rei harakamiの2001年作『Red Curb』(Sublime/ミュージックマイン)、フォーク・クルセダーズのベスト盤『ゴールデン★ベスト』(EMI Music Japan)