こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

urban music revue

 

「しかし暑いですね……」

「こんだけ暑いと、〈暑いですね~〉って言っておけば話が済むからいいよね」

「現時点ではわかりませんが、9月半ばぐらいまで残暑が続くという話もありますし、本当にどうにかしてほしいです」

「そんな時こそ爽やかなR&Bを聴くといいですよね!っていう話に持っていこうとしてるわけ?」

「字数はあるので、そこまで話を急いではいませんよ」

「まあ、俺はクソ暑いのも案外イヤじゃないけどさ。それでもアーバンで流麗なサウンドでキメたい気持ちはよくわかる」

「そんなわけで今回はアーバン・ミュージックの注目作を取り上げているのです」

「アーバン・ミュージックってもいろいろあるでしょ。そのなかで今回はR&Bを載せるってこと?」

「あなたとは共通認識がないのでハッキリさせておきますが、〈アーバン〉っていうのは単純にヒップホップとR&Bを合わせたカテゴリー名のことです」

「日本だと〈ブラック〉ってことね?」

「あなたとは共通認識がないのでハッキリさせておきますが、いまは直接的に肌の色を連想させるブラックという言葉は好まれない場合もあるので、アーバンと呼んでいるのです。ラップとも歌モノとも区別しづらいタイプのアーティストも増えていますから便利なのですね。ついでに指摘しておきますが、厳密に言うとヒップホップは黒人音楽ではありません」

「うるせえな、ジャンル博士かよ! じゃあさ、博士的に最近のR&Bはどうなのよ。エレクトロ以降?っていうのか、ポップスみたいな方向に行きすぎると、あんまり俺的にはアーバンな雰囲気に酔えなくなってくるかな……ってのもあるけどさ」

「そのアーバンな雰囲気、という言葉はどういう意味で使っているのですか?」

「いや、それはシティー感というかさ、星屑を散りばめた摩天楼の輝きと洒落た恋のときめきを……」

「それはいわゆるアーベインというやつですかね。ちょうど〈ロック! 年の差なんて〉でもボンゾさんが仰っていますが」

「どれどれ……ホントだ。〈う~ん、たまらなくア~ベイン〉だって。Urbaneね」

「アーベインは〈都会的な~〉、アーバンは〈都会/都市の~〉ですね。後者は単純に物質としての都市、というニュアンスになるようですよ」

「辞書見てるんじゃん。でも誤解があるのはわかったな。そういや〈部長刑事〉が〈部長刑事 アーバンポリス24〉にリニューアルした時に〈全然シャレてねえじゃん〉って思ったけど、おかしくなかったのか……」

「それと、ここで言うカテゴリー名としてのアーバンは、単語の意味を考えないで単純にR&Bとヒップホップということなのですが。ちなみにあなたとは共通認識がないのでハッキリさせておきますと、ジャンル名としての〈ソウル〉も、リズム&ブルースという呼称を洗練された誇り高い名称に変えただけなので、〈魂を込めてガーガー熱唱しているのが真のソウル・ミュージック〉などという文言は都合良く解釈しすぎです。正当性を強調したがるあまり、真贋の問題にして無意識に何かを貶めようとしてしまうのはあなたの悪いクセでしょう」

「俺は言ってないでしょ。しかも関係ない話になってるじゃん……ただ、最近はいろんな方面の人がアーバン系の音を採り入れてるけど、それはどうなんの? ジャスティン・ビーバー君とかアギレラとかさ」

「そういうアーバン・ポップはいまや世界的なポップスの主流ですし、他にもアーバン要素を採り入れたロック・アクトも大勢いますが、それら=アーバンと言い切れるわけではないですよ。でもあなたがそういう器にばかり気を取られないで、音で判断すればいいことではないですか」

「何だよ、ジャンル博士も器の話ばっかしてるじゃん。そのうち怒られるよ」

「私は分類しているだけです。ジャンルの話にしたのはあなたですよ」

「いや~、今日も暑いですね……」

 

▼関連盤を紹介。

左から、ニーヨのベスト盤『The Collection』(ユニバーサル)、ドリームの2010年作『Love King』(Radio Killa/Def Jam)、R・ケリーの2009年作『Untitled』(Jive)

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2010年08月25日 18:00

ソース: bounce 324号 (2010年8月25日発行)

雑談/煌ひろみ×狛犬

インタビュー