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特集

SOUND OF THE CITY――強烈な存在感を発揮したジェイ・ディー~J・ディラのヴァイブ

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2010年08月13日 13:13

更新: 2010年08月13日 13:15

ソース: bounce 323号 (2010年7月25日発行)

文/黒犬

 

当初ファーサイドはQ・ティップ本人にプロデュースのオファーをしたらしく、彼の多忙もあってジェイ・ディーを紹介されたのだそうだ。そこで生まれたうちの一曲“Runnin”は現在に至るまで人気の高いクラシックだが、そんな偶然が重なって表舞台に飛び出したジェイ・ディーのビートは、すぐにQ様を嫉妬させるほどの人気を博することになった。デ・ラ・ソウルの“Stakes Is High”を経て登場したトライブ・コールド・クエストの問題作(と往時は囁かれた)『Beats, Rhymes And Life』は、ストリップ好きでベース~ゲットー・テックに親しんで育った男ならではのリズム感覚と、デトロイト・テクノにも通じる重層的なハーモニー感が発揮された、圧倒的に新しい仕上がりでシーンのドギモを抜いている。そもそもジェイ・ディーはQ・ティップやアリ・シャヒードと組んだウマーの構成員として注目され、Q様もすべてのクレジットをウマー名義にするつもりだったというが、ビートを聴けば誰が作ったかすぐわかってしまうジェイ・ディーの仕事ぶりは、そうした集団に馴染むものではなかったのだ。ミレニアムを跨ぐあたりから彼はルーツのクェストラヴやジェイムズ・ポイザーらと共にソウルクェリアンズを結成し、フィリー勢のジャジーでメロウなヴァイブも取り込みながら、コモンやディアンジェロ、エリカ・バドゥの作品では持ち前の浮遊感をよりコズミックで温かみのある音像へと発展させていく。その一方ではダーティーでズルムケなドラム・ループを編んだりしていたのだから、彼の引き出しの多さとそれらを行き来する嗅覚は本当に天才的だったのだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、ファーサイドの95年作『Labcabincalifornia』(Delicious Vinyl)、デ・ラ・ソウルの96年作『Stakes Is High』(Tommy Boy)、トライブ・コールド・クエストの96年作『Beats, Rhymes And Life』(Jive)、Q・ティップの99年作『Amplified』(Arista)、エリカ・バドゥの2000年作『Mama's Gun』(Motown)、コモンの2005年作『Be』(G.O.O.D./Geffen)

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