LONG REVIEW――羊毛とおはな 『LIVE IN LIVING '10』
カブトムシや蝉の飛来と合わせるように届けられる、羊毛とおはなの〈LIVE IN LIVING〉。GRAYのTERUも愛聴する歌とギターに少しの楽器を加えたシンプルなスタイルで作られたこのシリーズの最新作『LIVE IN LIVING '10』は、この夏もマイナスイオンたっぷりな涼風を運んでくれて、冷房のそばから離れられない日々に潤いと活力を与えてくれる。
ファイストのヒット曲“1234”の作者であるオーストラリアの美人シンガー・ソングライター、サリー・セルトマンが提供した可憐なスウィンギー・チューン“プロペラ・プレーン”に、ユーモラスな音色を奏でるスティーヴィー・ワンダー“Sir Duke”のカヴァーという冒頭の2曲からして、オープンな雰囲気が最高。今回ふたりが設えたリヴィングもまた充実した設備と行き届いたもてなしが魅力だが、ゲストを喜ばせる手腕がますます上達した模様だ。楽曲に応じて演奏の温度調節がより巧みに行われており、作品のヴァラエティー豊かな感覚もアップしていると言える。NHK「みんなのうた」で放送されたチャーミングな“あくび猫”、清廉なコーラスワークを聴かせる“Mr.アンブレラ”、ジャジーに迫るトム・ウェイツの“Ice Cream Man”など印象的な楽曲がいろいろと並んでいるが、千葉はなの純朴な歌声が胸を焦がす、映画「さんかく」の主題歌“空が白くてさ”がたまらなく良い。
羊毛とおはなのライフワークである〈LIVE IN LIVING〉シリーズは、ふたりの接客スキルの向上と共にこれからさらに魅力を増していくだろう。もうすでに次の夏が楽しみでしょうがない。
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