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LONG REVIEW――フジファブリック 『MUSIC』

掲載: 2010年07月21日 18:00

更新: 2010年07月21日 18:21

文/金子厚武

 

フジファブリック_J170

志村正彦の急逝後に届いたフジファブリックの新作は、〈新しい季節の始まり〉を感じさせる作品である。志村のソングライティングと、バンドのポテンシャルが高い次元で融合した素晴らしい作品なので、あまり余計な意味性を付与するべきではないと思うのだが、それでも、この〈始まり〉の感触は本作の大きな魅力となっている。

作詞作曲からアレンジを含めてほぼすべてを志村が一人で担当し、自分の弱さを曝け出すことで〈音楽を続け ること〉ともう一度向き合った前作『CHRONICLE』を経て、レーベル移籍後の第1弾作品となった本作は、軽快なアコギに乗せて志村が久々に四季について歌うタイトル・トラック“MUSIC”と共に幕を開ける。続く“夜明けのBEAT”も、彼らの真骨頂と呼ぶべき4つ打ちのダンス・ナンバーで、そのタイトルといい、〈バクバク鳴ってる鼓動 旅の始まりの合図さ〉という歌詞といい、やはり〈もう一度始めよう〉という強い意志が伝わってくる。さらに印象的なのが6曲目に収められた “wedding song”で、結婚する二人に対するストレートな祝福が綴られたこの曲もまた〈始まり〉を感じさせる曲であり、志村の表現が、外向きのヴェクトルへと変わりつつあったことを象徴する曲でもあるように思うのだ。

もしも、前作でバンドの歴史が幕を閉じていたとすれば、どこかネガティヴな感情も残ったかもしれない。しかし、前向きなヴァイブを全面から感じさせる本作が、その印象を打ち消してくれたことが何よりも嬉しい。そう、これからもフジとして歩むために。バンドの継続を選択し、本作を完成させたメンバーに、心から感謝したい。

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