INTERVIEW(1)――フジファブリックとして胸を張れる作品
フジファブリックとして胸を張れる作品
フジファブリックのニュー・アルバム『MUSIC』は、バンドによる完璧な作品だ。前作『CHRONICLE』が、志村正彦という音楽家個人の世界観を濃密に打ち出した作品だったのに比べて、ここにはバンド本来の自由なイマジネーションに溢れる演奏と、非常に風通しの良い空気感と、そして素晴らしい歌がある。正直、聴く前に感傷的で後ろ向きな気持ちがなかったといえば嘘になるが、いまはもうない。音楽はどんな感情さえも偉大な力に昇華させるのだということを、これほど前向きに教えてくれるアルバムは他にない。
「フジファブリックとして胸を張れるアルバムだと思うし、いままでの作品とはまた違った良さがある、すごくいいアルバムが出来て嬉しいですね。『CHRONICLE』を作り終えた瞬間から、次はみんなでもう一度曲を持ち寄ってアルバムを作ろうという話が最初からあって、デモ聴き会をずっとやってたんですよ。そこで〈これはアルバムに入れよう〉ということを話し合って集まった曲たちなんです。そこまで出来ているし、2010年に入って何から録りはじめようかということもある程度決まっていたので、〈やるしかないだろう〉というモチヴェーションで作りました」(山内総一郎、ギター/ヴォーカル)。
冒頭曲“MUSIC”の最初のワードが〈心機一転〉であることからもわかるように、すでにレーベル移籍が決定し、『CHRONICLE』で個人的な衝動を出し切ったこともあって、志村のニュー・アルバムに向けた曲作りのモードは「楽しげでした」(金澤ダイスケ、キーボード)という。スウェーデン録音を敢行した『CHRONICLE』の明快でダイナミックなギター・サウンドについて、当時志村は「USインディーと呼ばれる一派の音楽に感化されて、パワー・ポップを作りたくなった」と説明し、「18歳の頃はクラシックやジャズや60〜70年代のロックやポップスを聴いて感化されたが、年齢と共に聴く音楽が若返ってきている」とも言っていた。事実、フジファブリックの音楽はセカンド・アルバム『FAB FOX』で複雑なサイケデリック路線を極めた後、より明快なポップさを増しながら現在に至っている。
「『FAB FOX』の曲をライヴで久々にやると、〈何でこんな難しいことをやってたんだろう?〉と思いますからね(笑)。変におっさんなところもありましたから。でも最近は若いというか、わかりやすい。前よりも歌を聴いてもらいたい感じの演奏であり、歌詞の内容であったり、そういうのが多いですね」(金澤)。
「今回は歌詞も含めて、本当に前に向かってるなっていう感じが自分で聴いてても思います。せーので録っているのでみんながちゃんと曲を理解してやってるし、塊になって出てますよね」(加藤慎一、ベース)。
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