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EVERY LEGEND SHE,VE EVER WANTED TO STAND――アギレラの歌唱スタイルはどこからきたの? そのルーツを紐解こう!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2010年06月23日 17:59

更新: 2010年06月23日 18:15

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

文/北爪啓之

 

アギレラの圧倒的な歌唱力が、アイドルという枠組みから完全にハミ出しちゃっていることは周知の事実だが、さて、いったい彼女の歌唱法のルーツはどのあたりにあるのだろう。8歳の頃からジャズやソウル、リズム&ブルースなどの古き良きUSルーツ音楽に親しんでいた彼女であるが、とりわけ好んだのはエラ・フィッツジェラルドやエタ・ジェイムズ、アレサ・フランクリンといった、パワフルだが同時にブルージーな哀感も湛えたシンガーだったそう。なるほど、彼女の表情豊かなヴォーカルの源泉がここには確かにある。が、黒いフィールをモロ出しにせず、あくまでポップスとしてそつなく昇華しているあたり、アレサの後を継ぎながらもよりコンテンポラリーで白人マーケットにもマッチする歌を聴かせたチャカ・カーンや、その方法論をさらに推し進めてソウルのポップ化を体現したホイットニー・ヒューストンなど、ソフィスティケートされた黒人シンガーの系譜からその影響はよりダイレクトに窺える(ちなみに、デビューのきっかけになった映画「ムーラン」のテーマ曲のオーディションでアギが披露したのは、ホイットニーの“Run To You”だ)。こうした流れの延長線上にいるマライア・キャリーのことも大好きだと公言しているし、デビュー時にマライア級の声域と賞賛されたのも事実。さらに、マライアとほぼ同期の桜であるトニ・ブラクストンからも、スモーキーかつ艶気のある大人のエロ歌唱を密かに学んだに違いない。

また、直接影響を受けたかどうかは定かでないが、ペギー・リーやダスティ・スプリングフィールド、ルルら往年の白人歌手に通じる匂いも少なからず感じてしまう。特にダスティは類い稀な美貌とソウルフルな歌声、脱アイドル的な立ち位置も含め、〈60s版アギ〉と逆に呼んでしまいたいほどだ。それと、あくまで推測なのだけれど、意外にもリッキー・リー・ジョーンズを好きなんじゃなかろうか。ジャズやソウルを消化し、清純な少女も場末の娼婦も演じ切れる彼女の変化自在な歌にはアギとの近似性を感じるのだが。そういえば、リッキーもアレサ・チルドレンだし……。真相はいかに。

 

▼関連盤を紹介。

左から、アレサ・フランクリンの68年作『Lady Soul』(Atlantic)、チャカ・カーンの81年作『What Cha' Gonna Do For Me』(Warner Bros.)、ホイットニー・ヒューストンの92年作『The Bodyguard: Soundtrack』(Arista)、マライア・キャリーの91年作『Emotions』(Columbia)、ダスティ・スプリングフィールドの69年作『Dusty In Memphis』(Atlantic)、リッキー・リー・ジョーンズの79年作『Rickie Lee Jones』(Warner Bros.)

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