INTERVIEW(1)――ヒット・ソングに絶対的なフォーミュラはない
ヒット・ソングに絶対的なフォーミュラはない
『Exit Planet Dust』
『Dig Your Own Hole』
『Surrender』
『Come With Us』
『Push The Button』
『We Are The Night』
ケミカル・ブラザーズのアルバム・タイトルは、いつだって時代の風とチャネリングしながら作品の世界を示唆してきた。そんな18年に及ぶ彼らの歴史と照らし合わせてみても、今作ほどアルバムの世界観をダイレクトに表現したタイトルもないのではないだろうか。
『Further』――時空の彼方へ。
冒頭の“Snow”からラストの“Wonder Of The Deep”まで、徹頭徹尾、聴き手を〈トバす〉サウンドで統一された強烈なアルバム。バンドは『Further』のテーマを次のように語っている。
「制作中はずっとワクワクしていたんだ。このアルバムは間違いなく僕らの要となる作品だと思う。僕らのアルバムは多くの場合、Q・ティップやフレーミング・リップスをフィーチャーした異色な曲や、フル・テクノみたいな曲があったり、大半はミックステープみたいにさまざまなアイデアが盛り込まれている。今作がこれまでと異なる点は、最初から最後までが一貫して共通の雰囲気、エモーション、サイケデリア・サウンドになるようなアルバムをめざしたところにあるんだ。だから、いままでとは違う仕上がりになっていると思うよ」(トム・ローランズ:以下同)。
そして、アルバムにさらにドラスティックな変化を与えるため、本作で2人は大きな試みをしている。そのひとつが長いキャリアのなかで初めてとなる、ノン・フィーチャリング・アルバムにチャレンジしたということだ。
「今回のアルバムではステファニー・ダズンにバック・ヴォーカルを担当してもらってるんだけど、それ以外では誰ともコラボレーションしないって決めて、リード・ヴォーカルを入れるのも止めたんだ。単に曲の一部を成すおもしろいヴォーカルであって、それ以外のサウンドと並列に扱っているんだよね。ソングライターが書くような音楽も好きなんだけど、今回みたいに言葉がただひとつのテクスチャーとして使用されている音楽も好きなんだ。『Brotherhood』のなかでもっともヒットしたのは恐らく“Hey Boy Hey Girl”と“Block Rockin’ Beats”なんだけど、そのどちらもゲスト・ヴォーカルは起用していない。つまり、アイデアが良くて人々の心に響くものであれば、必ずしも他の人が考えるポップ・レコードの特徴にあてはまる必要はないんだよ。別に売れたから言っているわけではないけどさ、ヒット・ソングに絶対的なフォーミュラはないと思っているんだ」。
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