ミドリにまつわるあれこれを通して見えてきた、あれやこれやなアーティストたち
あふりらんぽやZUINOSINら〈関西ゼロ世代〉以降に登場したということもあり、何かとスカムで混沌としたバンドという印象があるかもしれないが、実際のミドリの音楽性は何とも多彩だ。確かに、最初のアルバムが元羅針盤の須原敬三が主宰するGYUUNE CASSETTEからリリースされていたように、BOREDOMS~想い出波止場~OOIOOといった関西アンダーグラウンド系の匂いは強い。だが、実力派として知られるジャズ系ベーシスト・岩見のとっつぁんの加入もあってか、昨今はアヴァン・ジャズ系の要素も多く、ジョン・ゾーンやルインズあたりと共演してもハマってしまいそうなほど。また、ジャズとポップスの間に橋を架ける存在という点では、静と動の違いはあれど、渕上純子と船戸博史によるユニット=ふちがみとふなととシンクロする部分も窺えるだろう。また、パンキッシュな破壊力を持った女性メインのバンドという意味では、こちらも関西出身の赤痢がルーツに浮かんでくるし、奇天烈なカリスマ性を持っている女性ヴォーカルという点ではゲルニカやヤプーズなどで活動してきた戸川純と後藤まりことの間には何らかの共通点がある。いっそ音楽性を無視して現象面、日本のロック・シーンのなかでの存在感にのみ特化すれば、相対性理論や神聖かまってちゃんの前にミドリがいたとも言える。
とはいえ、それらはあくまで演奏面とイメージにフォーカスした場合であって、ミドリの楽曲そのものは極めてポップで案外メロディアスだ。結成当初は歌謡曲を視野に入れていたというだけあり、とりわけ『shinsekai』にはアイドル歌謡のように可愛らしいナンバーもある。そういう意味では、演奏にパンチがあってコンフューズドしているが人懐っこく乙女チックな部分を内包したポップ・バンド、というのがミドリの音楽性の断面と言って良いのだろう。となると、常に先鋭的な作品作りに挑戦するもガーリーな雰囲気を持つクラムボン、実際にトリビュート・アルバムにも参加していたが、広く愛される大衆性と華やかさも兼ね備えていたJUDY AND MARYあたりがミドリを形成する重要なピースなのかもしれない。
▼関連盤を紹介。
左から、想い出波止場の91年作『水中JOE』(アルケミー/Pヴァイン)、ジョン・ゾーンの89年作『Naked City』(Nonesuch)、ふちがみとふなとの2008年作『フナトベーカリー』(吉田ハウス)、ヤプーズの87年作『ヤプーズ計画』(テイチク)、相対性理論の2010年作『シンクロニシティーン』(みらい)、神聖かまってちゃんの2010年作『友だちを殺してまで。』(PERFECT)、クラムボンのニュー・アルバム『2010』(コロムビア)
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