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INTERVIEW(2)――丹精込めて作り上げられた〈新世界〉

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2010年05月12日 19:00

更新: 2010年05月12日 20:18

インタヴュー・文/土田真弓

 

丹精込めて作り上げられた〈新世界〉

ミドリ_A2

怒涛のインプロヴィゼーションがひた走る“凡庸 VS 茫洋”に、後藤の可憐な歌とハジメのデス声が交錯する狂乱のファンク・ナンバー“さよなら、パーフェクトワールド。”、破綻の淵を綱渡るデストロイ・ジャズ“どんぞこ”など、これまでの彼らの進化形的な楽曲がある一方で、みずからが語る通り、本作ではまさに〈ミドリのニュー・ワールド〉と言える側面も多く提示されている。それは例えば、冒頭を飾る“鳩”。ノスタルジーすら匂わせる叙情的な詞世界を穏やかに聴かせたミッド・チューンである。

「それね、ふざけて作ったんですよ。〈鳩が飛んだわ、鞄を持って〉から〈ああー海が燃えたわー〉までが僕のギターの弾き語りで、スタジオでジャーン、ジャーンってやって〈じゃあこれを、やろうー!!〉とか言ったら、僕コードとメロディーを全然間違ってて(笑)。ハジメがコード直してくれたらこんな曲になりました」(後藤)。

第2の例は“メカ”。機械的に反復するビートの合間でクラシカルな転調が〈歓喜の歌〉級の壮大さで爆発する破天荒なダンス・ナンバーだ。

「〈メカって言いたいな〉と思って。たぶん思いつきやと思います(笑)。ナメた感じのギターとか、4つ打ちとかしたいなーって。工場作業したことあります? 袋詰めまくるとか値札付けまくるとか。僕したことあるんですけど、ああいう作業をずっとしてたら気がおかしくなるんですよ、僕。作業してるところの目の前に時計があって、12時と15時に休憩があるんですけど、12時がホンマこうへんと。で……まあ、あの転調は12時の感じですよね(笑)。〈12時来たー!〉って(笑)」(後藤)。

「そういう意味では、〈歓喜〉っていうのは合ってましたね(笑)。〈休憩ー!!〉って(笑)」(ハジメ)。

そして第3の例は、ハジメがリード・ヴォーカルを取る“春メロ”。学童唱歌の如きピュアなメロディーが切なさを誘う。

「最初は〈大丈夫かな?〉っていうのがあったんですけど、いざ歌ってみると気持ち良いですね(笑)。曲自体は数年前に音楽配信サイトに上げていたピアノ・ソロの音源を元に、キーや構成を変えたりしたものです。で、歌詞は後藤さんに補正してもらいつつ表現を変えたりとかしてあんな感じに。ある意味、このアルバムのパンク・サイドじゃないでしょうか(笑)」(ハジメ)。

このように、いわゆる〈新世界〉を挙げていくとキリがないが、なかでも突き抜けたポップ感を放っているのはAxSxE(NATSUMEN)がミックスを手掛けた“リズム”“鉄塔の上の2人”だ。挑戦的な変拍子と転調、そしてキャッチーなメロディーがダイナミックに炸裂するミドリ節全開の楽曲に、さらなる奥深さを添えている。

「AxSxEさんにやってもらった2曲は特になんですけど、ミックスで化けたかなと。ミックスも〈作曲〉になるのかなって思いました。まだまだ自分たちのことわかってないなっていうか。アレンジとか音の感じとか、こんなに引き出してもらったっていうのはありましたね」(ハジメ)。

解体/再構築を重ねた結果、楽曲として形を成したのは今回の10曲のみだとあたりまえのように話す彼ら。そんなバンドの全力投球ぶりに感嘆して、〈大事に、丹精込めて作り上げられたアルバムですね〉と語りかけると、後藤は「うん、ちゃんと作れた」と言って、ふわりと笑った。消費することなど到底できるはずのない音楽が、ここにある。

 

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