INTERVIEW(1)――新世紀のジャズの楽しみ方
新世紀のジャズの楽しみ方
──これまで8枚続いてきた〈夜ジャズ〉ですが、このシリーズが復活するのは、かなりしばらくぶりのことになりましたね。
「そうですね。キング編でひと段落してから、ここに〈外伝〉としてですが、新たに始まった感じですね」
──クラブ・ジャズとストレートなジャズを好む層との交わり具合って、須永さんから見て、いまはどんな印象がありますか?
「〈リアル・ジャズ〉と呼ばれるシーンと、若い人たちが自分たちなりのジャズをディグしている〈クラブ・ジャズ〉の動きの真ん中で、自分は繋げる役目にいますね。そういう立場でジャズに付き合っているというか、必然的にそんな動きをしてきたんです。権威ある某ジャズの雑誌で連載をさせてもらっているんですが、そこでも僕は孤軍奮闘しているんですよ。遅々として状況は進まないですね。オーセンティックなジャズのファンの方は、あいかわらず門戸を開いてくれないんです。もうちょっとオープンマインドで楽しくやっていけたらなあと、海外のジャズ・シーンでは実際にそうなっていますからね」
──ヨーロッパでは特にそういった動きがおもしろいですよね。
「たとえばイタリアでは、パウロ・スコッティ主宰のデジャヴ~Norma Bluという、いいレーベルがありますね。パウロもそこで、僕と同じような動きをしている。パウロはジャンニ・バッソをフィーチャーリングしてカムバックさせたりしていましたね。ジャンニ・バッソはその動きのなかで本当に嬉しそうに演奏していた(注:ジャンニ・バッソは2009年に没)。フィンランドでも、伝説的なミュージシャンたちと若手のファイヴ・コーナーズの連中がセッションをしている。向こうでは新世紀のジャズの楽しみ方として、いろんな選択肢が増えている。それで日本では……と。僕も試行錯誤をしているなかで、こういうコンピレーションを出す機会に至ったわけです」
──なるほど。そして、ここに収録されているジャズの作り手たちは、みな演奏するタイプの人たちですよね。
「そうですね。いまは若い世代のジャズ・コンボがやたらと多いんです。もちろん純粋にミュージシャンとして腕を買われて、いろんなセッションに行く人たちもたくさんいるけれど、まずコンボありきの人が多い。それが、いわゆるクラブ・ジャズと言われるシーンの担い手ではあるんですね。こういった人たちがいっぱい出てきているから、それをまとめてみた。それで〈夜ジャズ〉の〈外伝〉ということで、ショウケース的なものになればいいなと。僕の名前はタイトルに付いていますけれど、まとめ役です。僕はそういう責任を負ってしまっているというか(笑)」
──収録アーティストのなかには、須永さんの背中を見ながらレコードを買ってきたり、ジャズを演奏するようになった世代も多くいるような気がしますね。
「僕がやる必然性はすごく前から感じていましたけれど、それがいまこのかたちになったのでしょう。収録アーティストにはこれまで何かしらで関わりのあったバンドが多いです。そこに僕がやったリミックスも入っているし、僕自身、曲も提供しています。なので、単なるプロデューサーという立場というよりも、一応、仲間に入れてもらっている。そこでみんなで打ち上げてみようという部分もありますね」
▼須永辰緒の〈夜ジャズ〉シリーズの作品を紹介
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