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特集

AFTER SERVICE?――10年ぶりのニュー・アルバムを発表したサニーデイ・サービスのNOW

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2010年04月26日 21:00

更新: 2010年04月26日 21:02

ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)

インタヴュー・文/フミヤマウチ

 

 

思いがけず再始動がアナウンスされたのは2008年のことだった。〈八年という遠い季節を越えて、この夏、サニーデイ・サービスは再結成します──〉。

「最初はゴージャスにしようって話もあったんだけどね。田中は〈ピアノとかないとショボいんじゃないの?〉とか言ってたし。でも自分たちってショボいじゃん、ショボいなかにある美しさを提示するのが自分たちの仕事じゃん──で、3人でライヴやることになって。実際にやったら、やっぱりショボいのね(笑)。でも、ショボいなかに何かがあるのよ、自分たちがやりたいことって。だから、良かったなと思って。3人でやりはじめて3人でレコーディングして、ゲストに(鈴木)慶一さんと細野(しんいち)くんが入ってくれたんだけどそれだけで、あんまり他に頼ることなくやろうっていう『若者たち』の頃に近いような感じだった」(曽我部恵一、ヴォーカル/ギター:以下同)。

そうして10年ぶりに届けられたニュー・アルバム『本日は晴天なり』は、こちらがびっくりするくらいまんまのサニーデイ・サウンドが鳴っている。いや、こちらがびっくりすることも忘れるくらいあたりまえの顔をして、いつのまにか彼らのディスコグラフィーの末席に座っていた、という印象だ。

「自然に作るとサニーデイなんだなっていうのは思い知らされましたね。ソロ以降は、個人の表現をどういうふうにしたら個性的なものになるか?とかサニーデイとは違うことしようっていうのが出発点としてはあるからね。何にも考えずにパッとやるとサニーデイがやっぱり原点で、自分から出てくるいちばん自然な音楽の形なのかな、と思う。だから〈心機一転、再結成後のファースト!〉っていうんじゃなくて、『LOVE ALBUM』から10年経つとこうなったって感じで繋がってるんですね。今回、サニーデイの最後のキレイなアルバム、最終章みたいなものを残せたらいいなっていうのが最初はどこかにあったんだけど、作っていくうちに、それはないなと思って。キレイな青春だけじゃなくて、その青春が続いてどんどん枯れて終わっていく様を見せることが、サニーデイというバンドを聴く人にとって誠実なんじゃないかなってのはちょっと思った」。

そう、サニーデイ・サービスはずっと誠実なバンドだった。ウソのつけないバンドと言い換えてもいい。その時々の浮ついた部分やぎくしゃくした人間関係など普通なら塗りつぶしてしまいそうなものも、ディスコグラフィーには刻まれてしまっている。そして何よりも、聴き手にとってはその音楽に絶対的な信頼を置くことができた。具体的な風俗や心情を語ることなく普遍的な〈青春〉を描いた美しい詞世界と、それを彩るに相応しい、鈍色のサウンド。

「ちょっと滲んでるというかくすんでるというか、やっぱりサニーデイでやるとローファイなものになっていく……それも不思議だったなあ。昔はアナログで録ってミックスダウンしてたりしたんですけど、今回はプロトゥールスを駆使して現代のサニーデイ・サウンドをやりたいと思って……たんだけど、それを駆使しようが駆使しまいがあんまり変わらなかった(笑)。この3人が寄るとサウンドが変わらないね、不思議だけど。再結成した瞬間は、サニーデイのいちばんおいしい部分を抽出した〈大ポップ・アルバム〉を作ってそれをメジャーのレコード会社から出す、っていういままでやってこなかったものなら作れるかもっていう意識はあった。でもやってくうちに、サニーデイはそれと真逆のところにいて、そこをみんな好きになってくれてたというか……バンドをやってる友達から〈新しいの出来たんだよね〉って聴かせてもらうデモテープっていうか(笑)、そういうところが良かったんだと思って。やっぱり、自分たちの日々とか暮らしてる街の風景を飾らずに歌ったらいいんじゃないか……そうしたら〈多くの人に聴いてほしい〉ってことじゃなくなってきて、〈友達に聴いてもらうもの〉としか思わなくなったんですよね。だから、聴く人の顔が見えてる状態の音楽かもしれない。あの人と、あの人と、あの人──に自分の思いが伝わるかな?っていう……だから、〈おかえり〉って言葉を言ってもらって、誠意をもって〈ただいま〉って言えれば良かっただけなんですよね」。

この10年の間、いったい何人の新しい〈青春〉がサニーデイ・サービスを発見できたろう? これから何人が発見するんだろう?──その人たちもきっと言うだろう。〈おかえり〉と。

 

▼関連盤を紹介。

左から、『本日は晴天なり』に参加した鈴木慶一の2009作『シーシック・セイラーズ登場』(ソニー)、曽我部恵一バンドの2009年作『ハピネス!』、曽我部恵一の弾き語りライヴ盤『LOVE LIVE』(共にROSE)

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