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INTERVIEW(1)――設計図通りの“dreamer”

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2010年04月14日 18:00

更新: 2010年04月14日 18:22

インタヴュー・文/村尾泰郎

 

設計図通りの“dreamer”

 

――シングル“dreamer”を皮切りに、アルバム『VIEW』『forest at the head of a river』が続けてリリースされます。前回も2作連続リリースでしたが、今回もヴォリュームたっぷりですね。

藤枝憲「やりたいことがそれだけあった、というのがいちばん大きいですね。どんなシングルが作りたいか、どういうアルバムを2枚作りたいか、っていうのが自分たちのなかにあって。それを後にとっておくんじゃなくて、やりたいと思った時に間を置かずに全部出していきたかった。バンドとしていま、すごく調子が良いし」

笹原清明「また、すぐ作ってもいいですよ(笑)」

藤枝「うん。その気持ち、すごいわかるんですよね。スパングル的に曲を作るメソッドみたいなのができてきてるから、今回と同じようなアルバムでも、まったく違ったものでも、楽しみながらどういうふうにでも作れる気がしてて。(今回の作品に参加しているのは)前回の『ISOLATION』と『PURPLE』を作った時と同じサポート・メンバーなんですけど、そのなかでのやり方が確立されてきた。だから常にアイデアのソースはメンバー&サポートの人数分あるし、バンドの広がりとかが見えてきたんです」

――“dreamer”は久しぶりのシングルですが、歌詞とプロデュースを相対性理論の永井聖一さんが担当されていますね。意外な組み合わせですが、ぴったりハマッてます。

藤枝「今回は誰かに歌詞をお願いしようと思ったんです。久しぶりにシングルを切るんだから、自分たちの音を外に広げるようなものにしたかったんですよね。だったら、歌詞を外の人にお願いするのもいいかも、っていう話になって。で、スパングル的な詩というか、〈メッセージ・ソングとか恋愛ソングみたいにならないで、ニュートラルにメタ的な視点の歌詞にするには誰に頼むのがいいのか?〉というのでいろいろ考えた結果、相対性理論だったらそのマナーを守ってくれそうな気がして。そうやって検討しているうちに、永井さんにプロデュースとあわせてお願いしたらおもしろいかも、って話になったんです」

 

 

――レコーディングはいかがでした?

藤枝「レコーディング前には、メールで相当やり取りしましたね。でも、ベーシックの録音のみ永井さんは立ち会っていないんですよ。何回もやり直して録音したフレーズとかに感情移入してもらいたくなかったから。出来上がった音を客観的にジャッジしてほしかったんですよね。ただ、ヴォーカルに関してはニュアンスが勝負なのでレコーディングには立ち会ってもらいましたが、まあ、かなり録り直しましたね(笑)。やはり、永井さんには強いこだわりがあるみたいで」

大坪加奈「最初のレコーディングで、いろいろ細かく意見を聞きながら録って〈できた〉って思ってたら、数日後に〈もう一回、ある部分が気になるんで録り直したい〉って連絡があって。でも、そこだけ録り直すと空気が変わっちゃうんで、全部もう1回、みたいな」

藤枝「自分たちの場合、1回か2回録ったらOKだもんね」

大坪「それを聞いて、永井さんビックリしてた。永井さんのなかで私の声のベストなイメージがあるみたいで。ここは吐息みたいな感じで、とか、歌詞はこういう感じなんだけど歌い方はニコリともしない超クールな感じでとか、イメージをいろいろ伝えてもらって〈なるほど、なるほど〉みたいな。スパングルの時とはまた違っておもしろかったですね」

藤枝「スパングルの場合って、その時のレコーディングの空気をそのまま録るっていうか。デモやリハで決めてたメロディーと違っても、別にその時の感じがよければそれでOK。ボーカルのニュアンスもモヤっとした雰囲気で大丈夫なんですよ。でも永井さんは限りなくクリアーな方向なんで。ちゃんと設計図があって、現場の気分に流されたりしないんですよね」

――永井さんが弾くギターもアクセントになってますね。

藤枝「僕が永井さんのギターが好きで、ジョニー・マー的なところが(笑)。大坪さんが歌詞を第三者に譲るんなら、ギターもお願いしてもいいかなと思ったんです。永井さんのギターが入った仮ミックスを笹原君にメールで送ったら、〈これ、すごいいいね。自分たちでは弾かないフレーズだね〉って返事がきて」

笹原「覚えてないけど(笑)。やっぱりド頭で掴むギターがグッときますね」

藤枝「うん、永井さんはシングルという意味を突き詰めた結果、多分、ド頭の掴むギターのフレーズを考え抜いて、それを寸分の狂いもなく設計図どおりに弾いている。裏で笹原君が薄くギターを弾いているんですけど、全体を通してコード感まで細かくエディットしてあるんですよね。そういう緻密さは僕らにはなかったところで。そうやって計算されて出来た曲だからこそ何回も聴きたくなるし、耐久性もすごくある。シングル向きの曲だと思うんですよ」

大坪「周りの反応がすごいんですよね。身近なところでいえば、うちの両親が〈今回はいいじゃん〉って(笑)。これまでは、雰囲気はいいけど歌詞がわかりにくいとか、曲が長いとか言ってたんですけど」

藤枝「バンド12年やってきて、初めて両親からOKが出た(笑)」

笹原「親がわかるっていのは、すごいハードル高いからね」

藤枝「ちなみにうちの両親は、いまだに僕がバンドやってることを知りません(笑)」

 

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