LET THE RHYTHM HIT EM――ルーツを見せたがらない男たちの音楽的ルーツとは?
いまのオウテカは自分たちの好きな音楽を知らしめることについて寛容なようだが、かつての彼らは〈ヒップ ホップに影響を受けた〉とか〈ヒップホップなんて聴かない〉とか前言を何度も翻しては受け手を煙に巻いていた。それはそれとしても音から判断できる要素は あるもので、結成当初に影響されたのが“Hip Hop, Be Bop(Don't Stop)”のマン・パリッシュや、エジプシャン・ラヴァーなどUSのエレクトロ(・ファンク)だというのはわかりやすい。マントロニクスやサイボトロン などのマシーン・ファンクも一時のブリップ・ホップ路線を連想させるし、その意味では初期ブギー・ダウン・プロダクションズのチープで隙間を活かしまくっ たサウンドも近い気がする(ビートを組んでいたのはウルトラ・マグネティックMC'sのセッド・ジー)。
一方、UKで流行していたレイヴ音楽の影響も当然のようにあるわけで、そのなかでは“Suck Hard”を出していた頃のミート・ビート・マニフェストやレネゲイド・サウンドウェイヴのようなハードコア・ブレイクビーツがお気に入りだったと聞けば 納得がいく。また、ノン・ミュージシャンとして新しい音楽の在りようを提示する姿勢の面ではやはりブライアン・イーノにインスパイアされた部分も大きいの だろう。
ちなみに初作『Incunabula』に収められた“Lowride”はマイルス・デイヴィスの遺作から イージー・モー・ビーの手によるヒップホップ・チューン“The Doo-Bop Song”をサンプリングしたものだ。こうしたわかりやすい例は以降ほとんど表に出なくなるだけに、何だか微笑ましかったりもする。
▼関連盤を紹介。
左から、エジプシャン・ラヴァーの84年作『On The Nile』(Egyptian Empire)、マントロニクスの85年作『The Album』(Sleeping Bag)、ブギー・ダウン・プロダクションズの87年作『Criminal Minded』(B-Boy/Traffic)、レネゲイド・サウンドウェイヴのベスト盤『RSW 1987-1995』(Mute)、ブライアン・イーノの78年作『Ambient 1 Music For Airports』(EG/Virgin)、マイルス・デイヴィスの92年作『Doo-Bop』(Warner Bros.)