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特集

INTERVIEW――yukihiro 〈yukihiro best〉

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2010年03月10日 18:00

更新: 2010年03月10日 21:34

構成・文/土田真弓

 

苦しみますよ。でもそれも含めて、楽しむってことでしょうね

 

L'Arc~en~Ciel_A

 

不穏な闇にじわじわと侵食されるような緊張感。渦巻くエコー。漆黒の余韻。深く、重く、底なしに沈むダブ処理が施されたビートのなかで、抑揚のないhydeの声が木霊する――。すでに3人のコンポーザーが手腕を発揮していたなか、yukihiroがL’Arc~en~Ciel加入後に初めてバンドに捧げた楽曲“a swell in the sun”(98年)。ブリストル・サウンドに対するL’Arc~en~Cielからの回答とでも言うべきこの曲で、〈yukihiro best〉は幕を開ける。

yukihiro製のトラックは、L’Arc~en~Cielの作品中でもとりわけクラブ・ミュージックとの親和性が高い。彼の頭にあるイメージをひとつの楽曲として具現化する行為は、例えば、ポーティスヘッドやマッシヴ・アタックが纏うディープな質感を、あるいはプロディジーやケミスツが放つ破壊的/衝動的なダンス・ビートを――静にも動にも大きく振り切れる極端なグルーヴを、まぎれもない〈L’Arc~en~Cielサウンド〉へと制御するようなものではないか。本作の7曲を通して聴くとそんな考えがよぎるが、その〈制御する過程〉で鍵となるのが、残るメンバー3人の存在である。

「僕の曲は他の3人の作品に比べたら、多分にメンバーのアイデアが入ってる曲が多いんですよ。例えば“new world”(2005年)にしても、サビはhyde君が考えてくれていますし、“revelation”(2004年)もメロディーはhyde君がつけている。〈僕が全部作曲してます〉という感じのベストではない。たまたま曲のアイデアを最初に提示したのが僕だったので、僕名義にしてくれているだけで、そこから先はメンバーに助けてもらってるもののほうが多いという感じです」。

控え目にyukihiroは語るが、そういった発言は、バンド・メンバーの個性に大きな信頼を置いていればこそだろう。当然、自身のソロ・プロジェクトであるacid androidとでは、作曲に対する意識も異なってくるようだ。

「acid androidは全部、僕が決め打ちでやるんですけど、L’Arc~en~Cielはそうはいかない。acid androidの場合は、例えばですけど、ギター・リフから作ったり、サンプリングから作ったりする曲が多いんで、僕がイメージしたものをそのままやってくれと言うしかないんですよ。同じやり方をL’Arc~en~Cielでやろうとすると、いちいち注文することになるじゃないですか。ギター・リフひとつとっても、〈そこのミュートはこうやって弾いてください〉って。そうなっちゃうと、弾いてるのはkenちゃんじゃなくてもいいってことになってしまうわけで。それをL’Arc~en~Cielでやるのは違うと思っているので、そこの意識はかなり違いますね。L’Arc~en~Cielの場合は、任せたほうがおもしろくなるし、カッコ良くしてくれるから」。

その言葉を裏付けるように、4人全員のアイデア(メロディーやギター・リフにはhydeの、サビの盛り上がりにはtetsuyaの、メロトロンの雰囲気や元は2~3曲に分かれていたという原曲にはkenの意見が反映されている)が劇的な構成へと結実した“drink it down”(2008年)から〈yukihiro best〉を覆う空気は一気に〈動〉へと流れ出す。ハウス、ブレイクビーツ、インダストリアルなどを下敷きにしたマシーン・ビートをタフなバンド・サウンドと同期させ、怒涛の勢いで走らせた楽曲群がラストの“trick”(99年)まで並ぶが、どの曲も凄まじくポップ。こんなサウンドを90年代後期の、しかも日本のメインストリームで鳴らしていたという事実には脅威すら感じるが、逆に言えば、だからこそL’Arc~en~Cielというバンドの現在がある。来年は結成20周年。その一員として、yukihiroがいま思うこととは――。

「〈曲作りは僕はいいです〉って、許されるならば言いたいところですけど、このバンドの一員である以上、そうはいかないですから。(作曲の際は)苦しみますよ。でもそれも含めて、楽しむってことでしょうね。最終的に、このバンドは必ずそこに行けるんだってことはわかってますからね」。

同時代性とポピュラリティーを併せ持った楽曲――本人はあくまで謙虚だが、〈そこ〉に向かうリズムとビートをこのバンドにもたらした彼の功績は、やはり大きい。

 

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