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INTERVIEW――ken 〈ken best〉

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2010年03月10日 18:00

更新: 2010年03月10日 21:34

構成・文/増田勇一

 

その時に自分が感じる空気をそのまま曲にする

 

L'Arc~en~Ciel

 

音楽を必要以上に分類/解析するために時間や労力を費やすことほど馬鹿げた行為はない。結局のところ、この世には良い音楽か悪い音楽しか存在しない。しかもその善し悪しというのも、あなたが、あなた自身のために決めるしかないものだし、突き詰めれば判断基準は快感原則、すなわち〈自分にとって気持ちいいか否か〉でしかなくなってくる。で、思う。kenという人物はそれに対して物凄く素直であり続けているよな、と。

メイン・ソングライターの不在。L'Arc~en~Cielというバンドを稀有なものにしている最大の要因はそこにある。正確に言えば、4人ともそうだから特定不能だということ。そのなかにあってkenから生まれてくる楽曲たちに共通項を見つけようとすると、空気とか匂いとか温度感とか、そういった曖昧でカタチのないものしか思い浮かばない。が、その事実自体が、彼が自分自身の音楽ファンとしての快感原則に忠実であることを裏付けているように思う。

いろいろな音楽が好きで、しかもすべてが同じように好き。kenとのごく最近の会話のなかで、筆者はそんな意味合いの発言を耳にしている。実際、彼のソロ作品がさまざまなジャンルの境界線を超越したボーダーレスなものとして成立していたのは、そうした価値観ゆえだという気がするし、今回のセレクションを聴いて改めて感じさせられたのも、まったく同様のことだった。しかも彼は、自身の選曲が快感原則に従ったものであることを実にあっさりと認めていたりする。

「深くは考えてないんですけど、流れで決めていきました。1曲目がこれであったら、2曲目はこうあってほしい、その次はこういうやつが繋がってほしいって。違う曲を1曲目にしようって思い浮かんでいたら、まったく違った1枚になっていたと思うんですよ」。

さらに彼は、自身の曲作りのスタンスについても興味深い発言をいくつか重ねる。

「無理矢理、作ろうとするのではなくて、その時に自分が感じる空気をそのまま曲にするという作り方ですね。空気って、説明するのが難しいんですけど、それがあるかないかでまったく違うんですよ。そのなかに空気がなかったら、作る意味はないかなって、ちょっと思います」。

「自分が作る時にイメージしたものを、実際にメンバーが歌ったり演奏したりすると、そのイメージを超えて、濃くなっていったりするんですよ。年々、その密度がさらに濃くなっていって、LA'rc~en~Cielの色になっていくんだと思います」。

綺麗な理想論を語っているようにしか聞こえないという読者もなかにはいるかもしれない。が、これを本当に実践できているのがkenという音楽家のおもしろさ。もちろんここまで自然体であれるのは、並大抵じゃない素養が備わっているからこそでもあるし、そこに努力や痛みが少しも伴っていないなんてことはあり得ない。が、〈俺の痛みがわかるか?〉という音楽にのめりこみがちな自己体質を認識している筆者としては、彼のこうした〈俺にはこういうのが気持ちいいんだけど、どう?〉という姿勢に、共鳴よりもむしろ憧れめいた感情を抱いてしまう。なにしろ彼は、このセレクションに対して寄せられるであろうさまざまな意見についても想定したうえで、こんなふうに語っていたりするのだ。

「流れで選んでいるから、すっかり忘れてる曲もあると思います。作曲のやり方といっしょで、無理矢理、考えるという感じでは選んでないんです」。

意味や理由を求めようとすることも、時にはとても重要だ。が、考えはじめてしまう前に自分が感じたものが何だったかを、もっと大切にすべきなんじゃないだろうか。この7曲が無言のままに伝えてくれるのは、まさにそのことかもしれない。

 

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