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INTERVIEW――hyde 〈hyde best〉

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2010年03月10日 18:00

更新: 2010年03月10日 21:34

構成・文/森 朋之

 

影的な存在の曲に光を当てたい

 

L'Arc~en~Ciel_A

 

ヘヴィー・ロック、パンク、ニューウェイヴ、インダストリアルといったエレメンツを独特のバランスで散りばめながら、凄まじいスケール感を持ったロック・ミュージックを提示する――K.A.Z(OBLIVION DUST)と共に立ち上げたVAMPSでの活動からもわかるように、hydeというミュージシャンには実に多彩な音楽性が内包されている。その中心にあるのは耽美にして壮大、そして質の高いポップネスも感じさせるメロディーセンスだが、それは〈hyde best〉からもはっきりと伝わってくる。選曲の基準について彼は、「影的な存在の曲に光を当てたいと思った」と語る。

「最近こそ、シングルのカップリングは、P’UNK~EN~CIELですけど。初期の頃は違ったじゃない。で、俺、初期の頃は、カップリング要員にされることが多かったんですよ(笑)。“I'm so happy”“さようなら”然り。“Anemone”もそうなんですけど。なんかその、何かの影的な存在っていうか。でも、俺のなかでは結構良い曲だなと思ってて。その表題曲を喰っちゃうぐらいのパワーを持ってると思ってて。だから、そういう良い曲だなと思ってる曲だけど、影的な存在の曲に光を当てたいと思ったんですよね。そこに今回はターゲットを持ってきた。最近ファンになった人とか、そんなにL’Arc~en~Cielのことを知らない人がこのベスト・アルバムを聴いて、古い曲であったりとか、あまり知られてないかもしれないけど、良い曲なんだっていうのをフィーチャーしたかった」。

グラム・ロック直系のグルーヴと中期ビートルズにも通じるサイケデリアがひとつになった“I’m so happy”(96年)、アコースティック・ギターの響きを活かしたバンド・アンサンブルが爽やかな空気感を運んでくる“さようなら”(96年)、〈美しき憂い〉とでも呼ぶべきサウンドスケープが印象的な“Anemone”(2001年)。デリケートな情感と強烈なダイナミズムを同時に体感できる“いばらの涙”(99年)、繊細に構築されたギター・アレンジと幻想~神話的なリリックが溶け合う“In the Air”(94年)。hydeの言葉通りに〈隠れた名曲〉を中心にした本作は、彼の持つカラフルで奥深いソングライターとしての豊かな才能を改めて示すことになるはずだ。楽曲の世界観を最大限に引き出すヴォーカリゼーションの良さについては、ここで説明するまでもないだろう。

また、今作には一般的に代表曲として知られる“HONEY”(99年)、“flower”(96年)も収録。彼自身「L’Arc~en~Cielの歴史のなかの〈ポイント〉になってる曲だと思うんで、外せないかなと思って」とコメントしているが、そのうちの“flower”に関しては、世間の評価との微妙なズレを感じているという。

「この曲って、時代を俯瞰で見て、〈いまだったら、こういう曲を作れば売れるだろう〉って、狙って作った曲なんですよ。でも実際にその曲が、俺のなかで凄く良い曲かっていうと、そうでもない。そんなに高得点の曲だと思ってないんですよ。でもこの曲を好きで歌ってくれる人が多いから、自分のなかではちょっと不思議な存在の曲ですね。自分の価値観とはちょっと違う。“HONEY”とかは、俺、良い曲だなっていまでも思うけど、“flower”はそこまで思ってない。だから、ファンとか世間の人と、ちょっと価値観が違うんだよね、自分の感覚とは」。

マニアックな音楽を志向するみずからの資質をしっかり認識しながら、メジャー・シーンのど真ん中で巨大なセールスを生み出すロック・チューンへと結び付ける。その天性のセンスもまた、hydeの音楽に欠かせない、極めて重要なファクターなのだと思う。

 

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