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ジャズの神様のお気に入り 中平穂積さん(3)

カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2010年02月26日 16:32

更新: 2010年02月26日 17:05

ソース: intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)

text:髙平哲郎

Stanley Cowell

あるとき、中平さんがちょっといい話をしてくれた。

「スピルバーグの『ターミナル』って映画は観た?」

飛行機でその映画は観たが、ぼくはあまり面白いとは思わなかったと答えた。

「あの中にぼくが撮った写真が出てくるんだよ。映画を観た人から連絡があってね」

映画はこんな話だ。東欧から来た男(トム・ハンクス)は、渡航中に国が消滅しパスポートが無効になりニューヨークの空港から出られなくなり、空港内で生活する。数カ月して、彼が入国できたとき、ここに来た理由が分かる。彼の亡父はジャズ・ファンで、セロニアス・モンクら有名ジャズ・ミュージシャンの集合写真に写っている、全員のサインをもらうのを生きがいにしていた。男は残る一人、ベニー・ゴルソンのサインをもらいに来たのだ。ラストで彼のトランクにあるジャズメンの写真が出てくる。その中に上着の全面が汗でびっしょりのモンクの写真がある。この写真こそ、1966年にニューヨークのジャズ・クラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで撮影された中平さんの写真なのだ。どうしてその写真がスピルバーグの映画に? 答えはこういうことだ。映画に、ジャズメンの写真を提供したのはT・S・モンクという息子さんだ。この写真は、十年ほど前にドラマーとして来日した息子さんに中平さんが渡した、父親セロニアスを撮ったたくさんの写真の中の一枚だった。これは中平さんの作品の中でも有名な作品で、ぼくも店で見たり、写真集でも出会っている好きなポートレートのひとつだ。こうした素敵な巡り合わせに出逢えるのも、ジャズ一筋に生きてきた中平さんが、ジャズの神様の大のお気に入りだからなのだ。

Thelonious Monk

中平穂積写真家。1936年和歌山県本宮町生まれ。1960年、日本大学芸術学部写真学科卒業。1961年、アート・ブレイキー初来日を撮影、ジャズ・フォトのスターとなる。新宿のジャズ喫茶「DIG」、JAZZ BAR「DUG」のオーナー。2006年JAZZ BAR「DUG」引退。日本のみならず、海外でも写真展を開催。

寄稿者プロフィール
高平哲郎:編集者/放送作家/評論家/演出家。
〈近況〉翻訳訳詞をしたミュージカル『カーテンズ』(2月6日~24日)、構成演出の筒井康隆with山下洋輔『筒井 康隆、筒井康隆を読む』(2月19日~21日)に続き、構成演出をする『鹿賀丈史・市村正親/それぞれのコンサート』(3月4日~14日)とミュージカル 『ダウンタウン・フォーリーズ7』(4月4日~13日)の稽古と多忙な毎日。


※新宿店9Fにてタワーレコード新宿店presents『FREEDOM SWEET』発売記念「中平穂積写真展」開催中!(2010年2月末日まで)
貴重なジャズの歴史的作品を実際にみることができるチャンスです!



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