BEATS TO THE RHYME
日本の音楽シーンに地殻変動をもたらしたFUNKY GRAMMER UNITとは?
ヒップホップにおけるポッセ/クルーの美学は、例えばUSのジュース・クルーやヒット・スクワッドの在りようを日本にそのまま輸入したものだが、(雑な言い方だが)ここまで全員が一定のセールスや知名度を得た文字通りの〈勝ち組〉集団は海外を含めてもそういないのではないか。RHYMESTERが属するFUNKY GRAMMER UNITは、『俺に言わせりゃ』収録のポッセ・カット“FUNKY GRAMMAR”にEAST ENDとMELLOW YELLOWが客演したことを契機に結成されている。そもそもはZINGI(童子-Tが在籍。クルーにはLITTLEもいた)が中心になったイヴェント〈YOUNG MC'S IN TOWN〉にRHYMESTERとEAST ENDが出演していたという前提もあるのだが、その発展型となるパーティー〈FG NIGHT〉を拠点とした緩やかにして固い結び付きは、以来15年以上に渡って日本の音楽シーンの中核を賑わせていくことになる。
94年にEAST ENDが市井由理と組んだEAST END×YURIの“DA.YO.NE”は世間に〈ラップ〉の存在を認識させる特大ヒットとなったが、そこにはMUMMY-Dもクレジットされていた(宇多丸も一瞬登場)。翌年には、MUMMY-Dの実弟KOHEI JAPANを擁するMELLOW YELLOW、EAST ENDのダンサーだったSUを含むRIP SLYMEが相次いでデビュー。以降はKREVAとCUEZEROから成るBY PHAR THE DOPEST、さらにはINNOSENCEやLITTLE、RADICAL FREAKS(MCUとDJ TATSUTA)らが結び付き、やがて世紀を跨いでKICK THE CAN CREWとRIP SLYMEのブレイクを見ることになるのだった。RHYMESTERはそんな面々に刺激を受けながら己のストロング・スタイルを磨き上げていったというわけである。
▼関連盤を紹介。
左から、EAST END×YURIの“DA.YO.NE”を収録したコンピ『HIP HOP BIBLE 白盤』(ユニバーサル)、MELLOW YELLOWのベスト盤『大全集』(ファイル)、KOHEI JAPANの2007年作『Family』(ポニーキャニオン)、RIP SLYMEの95年作『Lip's Rhyme』(ファイル)、BY PHAR THE DOPESTの98年作『BY PHAR THE DOPEST』(adjust audio)、KICK THE CAN CREWの2003年作『magic number』(ワーナー)
- 前の記事: ROAD OF RHYMESTER――この20年の道程
- 次の記事: TOGETHER FOREVER