GUCCI MANE
次の10年を仕切る顔役はコイツだ!!
次は誰だ?というのが合い言葉のようになって……はいないが、ガツガツとミックステープがリリースされ、新曲が鬼のようにリークされ、新人もヴェテランも有象無象が入り乱れて競い合うUSヒップホップ・ゲームを観ていればそんな気持ちにもなってくる、というのが観戦者たちの偽らざる共通認識じゃないか。とにかくサイクルがメチャクチャ早い。ネット上でミックステープが支持を集めていてもアルバムにまで辿り着けない連中なんて山ほどいるし、つまづいてしまえばオーディエンスの目はもう他の選手に移っているのだ。
が、少なくとも2009年を通じて観戦者たちの熱い視線を繋ぎ止めていたのがグッチ・メインだったことに疑いはないだろう。前作『Back To The Traphouse』(2007年)でメジャー・デビューを果たしつつ、大きな成功を収めることができなかった彼だが、お務めを経た翌年あたりからソウルジャ・ボーイやネリーらの作品に参加しはじめ、2009年に入るとマライア・キャリーの“Obssessed(Remix)”やトレイ・ソングズ“LOL :-)”に次々と抜擢され、用意周到なミックステープをコンスタントにばらまいてハンパじゃないほどの支持を得るに至っていた。公式な先行カットの“Spotlight”はポロウ・ダ・ドンのビートにアッシャーを迎えるという(好敵手のヤング・ジーズィが客演したアッシャー“Love In This Club”を思わせる)興味深いフォーメーションでヒットを記録し、後はメジャー2作目となるアルバムを待つばかり……というところまで来ていたのだが、何とその『The State vs. Radric Davis』がUSリリースされる直前にグッチはまたしても収監されてしまったのだ(保護観察中に違反があったため、とされる)。
とはいえ、アルバム自体は前作の失敗を払拭すべく、ジーズィと縁の深いショーティ・レッドやバングラディッシュ、さらにはややご無沙汰感のあったスコット・ストーチらの大物がラインナップ。プライズをフィーチャーした“Wasted”や、リル・ウェイン&キャムロンを迎えた“Stupid Wild”、他にもキーシャ・コールやニッキー・ミナージ、トリーナ、舎弟のOJ・ダ・ジュースマンらが参加し、ゲストの絞り込み具合からも本気度の高さが感じられる。これは行く年のシメを飾るに相応しいメインストリームのヒップホップ・アルバムであり、来る年のスタンダードにもなりうるほど高品質な作品だ。現在も収監中のグッチだが、年を跨いでも彼の楽曲はどんどん世に出るだろう。2010年後半、予定通りに彼が帰ってきた時のゲームがどうなるのか、早くも楽しみなのだ。
▼グッチ・メインが参加した2009年のアルバムを一部紹介。
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