LONG REVIEW――avengers in sci-fi 『jupiter jupiter』 Getting Better
本作でメジャー・デビューとなるアヴェンズことavengers in sci-fiの魅力は、何よりその歌詞に反映されている壮大な世界観にこそある。キミとボクの関係を綴るのではなく、音楽への愛情を生真面目に表明するでもない、〈宇宙〉や〈神話〉といったキーワードが頻出する、子供ならではの妄想、もしくは不可思議な科学雑誌の内容をそのまま肥大化させたようなSFチックな歌詞は、そもそもロックとは僕らに日常とは違う世界を見せてくれるものだということを、改めて思い出させてくれる。
AIR JAM世代らしいパンキッシュな曲や、ハイハットの裏打ちが気持ち良い、いまのシーンにジャストなダンス・ナンバーで形作られた〈ロックの宇宙船〉を、床に並べられた無数のエフェクターやシンセサイザーを発火装置として、大気圏外へと飛ばすかのごとく高らかに鳴らされるアヴェンズのsci-fiロックは、聴き手を木星や火星へのイマジナティヴな旅へと、あっという間に連れ去ってくれるのだ。
本作には、70年代のプログレとバトルスを融合させ、クラシックのようにスケールの大きなエンディングを迎える“Ursa Minor”のような新境地がある一方で、“Monkey Bites The Sun”でオマージュを捧げているピクシーズのように、メロディーはこれまでと同様にどこまでもポップなのだから鬼に金棒というもの。ゆくゆくはUKにおけるミューズのように、その誇大妄想をとことん膨らませた、完全なる独自のプラネットを築いてほしい。