ズットズレテルズ
これぞ時代の寵児! 奇天烈で知的な噂のバンド……だった
まず始めに断っておくが、彼らは今年8月に解散したバンドである。よって、ここで紹介するファースト・アルバム『第一集』を聴いて〈ライヴが観たい!〉と思っても、残念ながらそれは不可能なので、あしからず。〈2010年期待のロック・バンド〉という本特集の趣旨にも反している気がするのだが……しかしこの作品、もといこの恐るべき子供たち、ズットズレテルズは、2010年を見据えるにあたって紹介しないわけにはいかない!
彼らは、ローザ・ルクセンブルグ~ボ・ガンボスのメンバーであった故どんとの息子・セイマンことラキタ(ギター)や、別枠で紹介しているOKAMOTO'Sでも活動中のヒゲメガネ(ベース)、スコポン(ドラムス)を擁する18歳の7人組だ。10代限定の夏フェス〈閃光ライオット2009〉への出演で注目を集めるも、前述の通り間もなく解散。が、そんな状況にも関わらずしれっとアルバムがリリースされるという異例の事態なのだ。そして、この作品が非常にヴァラエティーに富んだ超濃密なもので、ティーンエイジャーが作ったものとはにわかに信じ難いほど。基本となるのは2MCを活かしたファンキーな生演奏のヒップホップだが、アフロビートやスペイシーなジャム、リズム&ブルース調のロックンロールにダブ処理を施したサイケデリックなナンバーなど、そのローファイな録音も含め、タイムレスな魅力を放つ楽曲がずらりと並んでいる。JB'sやファンカデリックといったレジェンドの名をつい口に出してしまいたくなる気持ちも、ファンキー&グルーヴィーな本作を聴けばきっとわかってもらえるだろう。そんななか、セイマンがヴォーカルを担当した唯一の歌モノ“地球のへそ”の出来が実に素晴らしく、曲調も含めて在りし日の父上を彷彿とさせる名曲だ。
また、彼らが東京出身というのもおもしろい。これが大阪だと、かの地特有のストレンジな文化で育まれた天然の異端な音楽という位置付けになるかもしれないが、〈レペゼン世田谷〉である。Pファンクの華やかな衣装をネオ・ヒッピー的に着崩したような(?)ヴィジュアルなど、このバンドはいろいろわかってやっている知能犯に違いないと思わせるところからは、〈NYの知的な悪ガキ3人組〉、ビースティ・ボーイズに近い存在という見方がしっくりくるように思うのだが、どうだろうか?
このように、聴けば聴くほど早期の解散が惜しまれる。が、メンバー各々はさまざまな形で音楽活動を続けていくようなのでそちらのほうに注目しよう。そもそもタイトルを『第一集』としているぐらいだから、このバンド自体もこれで終わりということではないのかも。まあ何と言ってもまだ10代の若者たちなわけだし、まだまだたくさんの可能性があるということで、ズットズレテルズ to be continued……(勝手に)。
- 前の記事: INTERVIEW――黒猫チェルシー
- 次の記事: 2010年(代)のロック・シーンを掻き回すバンドはコレ!