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LONG REVIEW――黒猫チェルシー 『All de Fashion』 DECKREC



  筆者も深夜のTV番組「音燃え!」を観ていてトラウマに近い衝撃を受けた一人だが(彼らが演奏した途端、急速に30年ほど時代を遡ったかのようなアングラな匂いが画面越しにジワ~ッと伝わってきた)、現在19歳となった4人組がいまの世に問うロックンロール・アルバムが『All de Fashion』だ。

 ストゥージズやレッド・ツェッペリン、INU、ザ・スターリン、村八分など洋邦の初期パンク~ハード・ロックをサイケデリック・ガレージ臭で包み込んだ音像はダーティーなギラつきに満ちているが、そこに独自のユーモアを入れ込むことで聴き手に対する間口を大きく開放してしまうところが黒猫流。シュールonシュールな言葉選びが逆にポップな歌詞も然り、大ネタ中の大ネタとも言えるロック・クラシックの無邪気な引用も然り。リード曲“廃人のロックンロール”ではザ・フーの過剰にドラマティックなアノ曲の、後藤まりこ(ミドリ)と渡辺の絶叫デュエットが過熱するほどに哀切を帯びる“南京錠の件”ではジミ・ヘンドリックスの有名すぎるアノ曲のリフがド直球で飛び出したりと、クラシック・ロックのファンなら条件反射的に狂喜せずにはいられないエンターテイメント性も抜群である。

 エンジニアとして参加した越川和麿(毛皮のマリーズ)の手腕もあるだろうが、いまどき、こんな割れ鐘のようなギター(←褒め言葉)を爆音でドライヴさせられること自体がムチャクチャ格好良いし、細胞レヴェルの衝動に任せて無心で音を出しているようなバンド全体の佇まいも素晴らしい。どこを取ってもニヤニヤ笑いが止まらなくて……もう完全降伏であります。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/土田 真弓

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