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CROSS TALK――澤竜次 & 渡辺大知(黒猫チェルシー) × 會田茂一(FOE)(3)

引いたカードが全部当たり

――(笑)黒猫の二人は、ロックの歴史を遡って、順序立てて聴いたりします?

「順序立ててというよりは、自然と聴いてたみたいな感じですね。僕が自分で音楽を聴くようになったのはボン・ジョヴィが最初で、その次がクイーンで。僕は雑誌の〈BURRN!〉をずっと読んでたんですけど、〈ボン・ジョヴィとエアロスミスが……〉とか書いてあると、〈エアロスミスって?〉と思って聴いてみたりとか、それで〈エアロスミスとキッスがジョイント・ライヴをする〉という記事を読めば、〈キッスってどんなバンドなんやろ〉って。結局、80年代のバンドが〈好きなバンド〉として挙げるのが70年代にいて、70年代のバンドが好きなのは60年代のバンドで、とか……ビートルズやジョン・レノンが影響を受けたのはバディ・ホリーだとか、エルヴィスだとか、そういう感じで一つのバンドを好きになると自然と繋がっていくんですよ」


Photo by RyoNakajima(SyncThings)

會田「僕らの世代の音楽の聴き方に、すごく近い感じがする。僕も雑誌を読んだり、日本盤のレコードを買ってライナーノーツを読んで、〈この人はこんなメンバーと絡んでいるから、じゃあそれも聴いて……〉って、どんどん探っていったから。そのなかでも黒猫チェルシーは、ジョーカーを引いてないというか、ちゃんといい具合にいいものだけを聴いていってる気がする。一つのバンドに入りすぎてそのバンドの真似で終わっちゃうみたいな、そういうものじゃなくて、たぶん〈引いたカードが全部当たり〉みたいな感じじゃないかな」

「すごいオーソドックスなロックばかり聴いた後に、メタルを聴く時期があって、その次に日本のバンドを聴くようになって。ゆらゆら帝国とか、あぶらだことか、DMBQとか、ギターウルフとか、そのへんのバンドばっかりずっと聴いてて。INUとかスターリンとか村八分とかも。その時には〈それ一つだけ〉みたいな感じになってたんですけど、今度は日本のすごいポップなものも聴くようになって、〈こういうメロディアスな音楽はどこから来てるのかな〉と思って、外国の80年代のニューウェイヴとかを聴くようになったりとか。そんな感じで、ずっと続いて行くんやろなと思いますけどね」


Photo by RyoNakajima(SyncThings)

會田「そこがまた楽しそうでいいよね。そういうところに興奮して自分たちも音楽を作ってるというのは健全だと思うし、音楽家としてすごくいい状態だなと思いますね。僕が黒猫チェルシーを聴いていいなと思うのは、ヤワな感じがしないところ。ただ単にいろんな人に聴いてもらおうとしているだけじゃなくて、みんなにショックを与えるということを、間口の広さのなかで伝えているところが格好良いなと思いますね。ホント、あぶらだことかそういう名前が出てくると、すごいなぁと思いますよ。だから世代とか言うよりも、音楽好きの人がオリジナリティーを求めて音楽を作っているということで、自分にも引っかかるものがあるんだろうなと思います。あと、日本語に着地してるところがすごく好きですね。英語でやってるグループって、僕らの世代にもたくさんいるんだけど、ものすごい格好良いサウンドでも、日本語でやってないとどこかで満たされない気分になる」

「僕が洋楽ばっかり聴いてた頃というのは、英語なんてわかんないじゃないですか。だからメロディーとかリフとか曲調だけで曲を捉えていて、〈歌詞とかどうでもええわ〉って思ってたこともあったんですけど、ある時、エレファントカシマシを聴いた時にドスーンと来て、自分らで理解できる言葉の力はすごいんやなと思って。そういう、ズドーンと真正面から来る言葉もあれば、ゆらゆら帝国とか村八分とかの言葉遊びも自分の好きなリフと絡み合って入ってきて。理解できる言葉でないと、もう一つ響くものがないんかな、というのはすごい強く思うんです」


Photo by RyoNakajima(SyncThings)

渡辺「僕が洋楽をあまり聴かなかったのは、何が言いたいのかわかんないからで。まあ、何が言いたいのかを考えながら曲は聴かないですけど、歌詞まで耳を持っていけないというか。洋楽を聴く時って絶対ギターとかメロディーだけになるんですよ。だから僕は日本語の曲ばっかり聴いてたんですけど」

會田「僕もね、ちょうど20年ぐらい前には、別に歌詞なんてどうでもいいと思っていて、適当英語みたいな感じでやってたこともあったりしたんだけど、それがつまんなくなってきちゃってきたのね。自分でやっても、人のを聴いても興奮できないし。僕の先輩にコレクターズというバンドがいて、普通に洋楽が好きで音楽やってる人たちなんだけど、がっちり日本語に着地していて。そういうところを近くで見て、これをやらないでいると自分が音楽に醒めていっちゃうだろうなと思ったから、エルマロでは日本語で歌詞を書こうと。あと、当時よくいっしょにいたキミドリというグループのクボタ(タケシ)くんは、英語がネイティヴぐらいにしゃべれるんだけど、日本語でラップをやっていて。〈頭のなかでは日本語で考えているんだから、日本語で歌わないとおかしなことになる〉っていうことをふと言っていたのを聞いたのが、ターニング・ポイントだったのかな。でも、僕らの世代以降のバンドでも英語でやってるバンドは多かったし、それでたくさんの人を惹き付けてるバンドも多いから、あんまりこだわらなくなったのかなと思ってたんだけど。ここに来て黒猫チェルシーとかを聴くと、また違った感覚のグループが出てきたんだなぁと思って」

「せっかく日本のバンドやから、外国で演奏したとしても日本語で堂々と歌うっていう。フランスのバンドならフランス語で歌うだろうし、その国の言葉で、日本語独特のおもしろい言い回しとかもあるし、そこのこだわりはありますね」

會田「いいですね、そういうところが」

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/宮本 英夫

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