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CROSS TALK――澤竜次 & 渡辺大知(黒猫チェルシー) × 會田茂一(FOE)(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/宮本 英夫

60年代テイストといまの感覚

――アイゴンさん、黒猫チェルシーの新作『All de Fashion』は聴かれました?

會田「はい、聴きました。これはうまく説明できないことなんですけど、僕らと同世代のバンドにはない何かを感じましたね。レコーディングって、ファースト・テイクがすごく良いことが多いんですけど、よく言うのが〈ゼロ・テイク〉というもので。1テイク目の前に、録ってるのか録ってないのかわからないまま演奏した時にすごくいいテイクが録れることがあるんです。黒猫チェルシーのサウンドは、そういう感覚に近い気がします。もしかしたら何十テイクも録ったのかもしれないんだけど、どの曲もファースト・テイクのようなマジックがある印象ですね。無心でその曲を作ってる感じがあるから、曲を聴いた時の肌触りがすごく新しく感じるというか、耳に引っかかる。歌詞もそうだし、サウンドもそうだし、各楽器のリズムや音色もそんな感じがして、〈これは何だろう?〉と思ったんですけど。たとえば僕が18とか19ぐらいの時に、新宿JAMにいたようなバンドの感触に近いのかな。それはネオ・モッズ・シーンと言われていたバンドたちなんだけど――ザ・ヘアーとか、本物志向の格好良いグループがいっぱいいて、その音に出会った時と近いような感覚もする……んだけど、サウンド面では、黒猫チェルシーはまた全然違って。分析的に言うと、60年代的なテイストを感じるんだけど、いまのバンドという認識ができるところがすごくおもしろい気がする」

――黒猫チェルシーの二人は、ルーツを訊かれたら何と答えてます?

「僕は、いちばん聴いてたのはハード・ロックなんですね。だから、ふと出てくるフレーズとかには、ハード・ロックの影響があるのかなと思ったりするんですけどね。ギターを始めた中学の頃はハード・ロックばかり弾いてて、リッチー・ブラックモアとか、あのへんのコピーをしようとしてました。〈これを弾けたら上手いんや〉とか思って。で、〈リッチーより速く弾くイングヴェイ・マルムスティーンというのがいる〉って聞いたら、〈じゃあイングヴェイをコピーしたら俺はギターが上手いんや〉と思って、で、挫折して」

會田「(笑)」

「その後にジミ・ヘンドリックスとか、60年代の音楽を聴くようになったんですね。ザ・フーのピート・タウンゼントにしても、ソロは速く弾かないけど、すごい味のあるギターに衝撃を受けて。だからその二つですね。ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンみたいなハード・ロックのフレーズと、60年代の〈ジャカジャーン!〉みたいなギターの弾き方と」

會田「いま思ったんだけど、僕もリフを弾くのが好みだから、そこにシンパシーを感じるのかもしれないな。日本の音楽は絶対的にハーモニーとかコードがメインだと思ってるんですけど、いま僕がFOEでやってる音楽も〈リフの応酬〉って言ってるぐらい、ベースもギターもみんなリフみたいなもので構成されてるし。黒猫チェルシーも、リフだから好きなのかもしれない。さっきも言った、新宿JAMにいたバンドもみんなリフだった気がする。リズム&ブルースとかブルースから派生したブルージーなリフがあって、その上で歌を歌っていて、ドラムもベースも全員リフをやってるみたいな感じというか。澤くんの話を聞いていて、〈そうか、リフなんだな〉という気がしました」

――大知くんは、いちばん影響を受けた音楽というと?

渡辺「自分でもよくわかんなかったんですけど、最近考えてみて、そういえば憂歌団かなと思ったんですよ。中学生ぐらいまでは、声がきれいで歌の上手い人が好きで、自分も歌が上手くなりたいと思って練習したりしてたんですけど、憂歌団はダミ声で格好良いと思った初めての人だったというか。〈こんなのがあるのか〉と思って、練習してみたんですけどできなくて。で、高校生になってから、澤と啓ちゃん(岡本啓佑:ドラムス)がやってたバンドのライヴを観に行った時に、ヴォーカルがめちゃめちゃに歌ってるのを観て、〈できてる奴がおるやん〉と思って。〈自分が練習しても出なかった声が出てるやん、すげぇな〉と思いながらも、悔しくて。〈俺もそういうふうにやったろ〉って思いましたね。だから影響を受けたバンドは憂歌団と、澤と啓ちゃんがやってたバンドかもしれないです(笑)」

會田「僕もこの年にして、ダミ声になりたいんですよね。もうずっと思ってるんだけど、全然できなくて」

「でも、すごいセクシーに歌われますよね。好きです」

會田「いやいやそんな。ダミ声が出ないから、ハードな曲をやっても細い声になっちゃって」

渡辺「僕もそうだったんですよ。中学生の時には」

會田「どうやったの? バーボンとか飲んで(笑)?」

渡辺「(笑)僕も最初はわかんなくて。黒猫を組んだ時もうまくできなくて不安だったんですけど、〈とにかく適当に叫んでてくれたらいいから〉って言われて。そうすると、ライヴ1回やるたびに必ず声が潰れて、2~3日声が出なくなってたんですよ。それを繰り返してたら、なれました」

會田「僕、41になるんだけど、それをやって大丈夫かな(笑)。でもダミ声になりたいんだったら、それを超えないとね。喉は筋肉って言うもんね……この話、いい感じですよね。41になる男が19歳の男に〈どうやったらダミ声になるんですか?〉って訊いてるというのは(笑)」

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