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特集

RASMUS FABER

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/佐藤 譲

日本のアニメ音楽とジャズの関係

  その洗練されたトラックとメロディーで日本でも大人気のスウェーデンのプロデューサー、ラスマス・フェイバーが、名曲と誉れ高い日本のアニメ・ソング/アニメ音楽をエレガントなヨーロピアン・ジャズでカヴァーするアルバム『Rasmus Faber Presents Platina Jazz: Anime Standard Vol. 1』をリリースした。

 〈ラスマスがなんでアニソン?〉と驚かれる方も多いことだろう。その問いに答えるのなら、彼にとって日本のアニソンは日本ならではのオリジナリティーやオルタナティヴなムードを感じる魅力的な音楽だったから、ということに尽きる。思えば原曲を手掛ける久石譲、菅野よう子、大野雄二ら名だたる作曲者たちに共通しているのは、多彩なキャリアを通じて本来の意味での日本的なミクスチャー・サウンドを体現してきた点。ライヒからのミニマリズムが息づく久石譲、テクノやノイズまでも消化しながらコブシの効いたメロディーを響かせる菅野よう子、ジャズやファンクを通過して日本のフュージョンの源流を作った大野雄二。そんな彼らの音楽が外国人であるラスマスにとって極めてユニークに映ったのは想像に難くない。

 「最初に観たのは〈風の谷のナウシカ〉だね。そのあと〈AKIRA〉や〈GHOST IN THE SHELL〉のような欧米でも人気の作品や〈オネアミスの翼〉を観たんだ。で、僕は音楽を作ろうと思った時、いろんなハーモニーや、違ったタイプのムードを必要としていて、アニメ・ソングにはその要素が多く含まれていた。特にムードや感情を強調するための要素が強いところがいいね。〈マクロスプラス〉のサントラを買ったのは18か19歳の頃だったけど、凄く気に入ってたよ」。

 そして同時に、彼が幼少期から大きな影響を受けていたのはジャズだ。グラミーを受賞したサックス奏者のグンナール・ベリィステーンを父に持つ彼は、DJ/プロデューサー以前にジャズ・ピアニストとして活動していた。ラスマスが沖野好洋ら多くのクラブ・ジャズ系DJからサポートを受けている理由には、彼の音楽にジャズの本質が詰まっているからだろう。つまり〈Platina Jazz〉は彼にとって自身のルーツを掘り下げる作業でもあったのだ。

 「そうなんだ。それにアニメ音楽とジャズには興味深い点もある。例えば“ハレ晴レユカイ”は日本のポップス寄りのアニソンがいかにユニークな作りなのかを示す例だと思うよ。オリジナルはジャズとかけ離れているけど、コード進行や和音を抜き出してみると、古い西洋音楽を彷彿とさせて、これがジャズにアレンジする時に役に立つ。だからこのコンセプトを聞いた時、〈いいな〉と思った。それで僕はどちらのファンも楽しめる、オリジナルに忠実で、全曲リアルでタイムレスなジャズにしようと試みたんだよ」。

 こうして生まれたアルバムは、アニメ音楽の持つエモーショナルなメロディーと多彩な音楽性が、アフロ、スウィング、クラブ・ジャズ仕様とさまざまなスタイルで表現されている。それを支えるのは、ラスマスがビル・エヴァンスの再来と絶賛するマーティン・パーソン、ラスマスの大ヒット曲“Ever After”で歌っていたエメリー・マクイーワン、そして父グンナールらスウェーデン最高峰のミュージシャンたちだ。クラブでヘヴィープレイ必至のボッサ・ジャズ“Thanatos -If I Can't Be You-”や、極美のストリングスが舞う“Children Of The Light”など、彼の一連のハウス作品と地続きにある、気高く、美しく、優しい、温もりに満ちたドラマティックな楽曲はリスナーのハートを鮮やかに溶かしていくことだろう。

 「“Children Of The Light”のエミリーの歌にマーティンは〈思わず泣きそうだった〉と言ってたよ。“時の記憶”も良い曲だ。“DOLL”はイントロが本当に素晴らしい。“水の証”は〈ガンダムSEED〉を観ていて知っていたし、素晴らしいジャズ・バラードにできると思った。あと僕は〈創世のアクエリオン〉のオリジナルが凄く好きなんだ。好きって言うのがちょっと恥ずかしいと思うくらいにね(笑)」。

 アニメ音楽の良さが国外からの俯瞰した視点で引き出され、エレガントなジャズへと生まれ変わった〈Platina Jazz〉。音楽的にも文化的な面からも極めて重要な意味を持つ作品である。原曲の素晴らしさを体感でき、鍵盤の一音から胸に染みるハートフルな一枚をぜひご堪能あれ。

▼ラスマス・フェイバーの近作。

▼原曲を収めた作品を一部紹介。

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