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LIVIN ON A PRAYER ボン・ジョヴィ世界にはカントリーと聖歌があらかじめ内包されていた

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年11月04日 18:00

ソース: 『bounce』 315号(2009/10/25)

文/出嶌 孝次

 ボン・ジョヴィがカントリーに傾倒した2000年代半ばといえば、ラスカル・フラッツらの台頭によって、骨太なドライヴィン・チューンと力強いバラードを装備した(=往年のアメリカン・ロックとほぼ同質の)新進カントリー勢がポップ市場の中枢に完全に根付いた時期だ。シングル化に際してジェニファー・ネトルズ(シュガーランド)とデュエットした“Who Says You Can't Go Home”(2005年)が、ロック・バンドで初めて全米カントリー・チャートを制し、続く『Lost Highway』も相まってバンドの支持層をさらに拡げたのは言うまでもないが──当時のジョンがキース・アーバンらの作品を愛聴していたとはいえ──なぜこうした試みが実現したのか? まさにそのラスカルやリアン・ライムスを手掛けたダン・ハフこそが『Lost Highway』のキーマンになったわけだから、時代を読むボン・ジョヴィの嗅覚が鋭かったのだ、と片付けることもできる。

 ただ、彼ら(というかジョン)の、普通に働いて暮らす人々の側に立って喜怒哀楽を描く詞作のタッチが、そもそもカントリー(やブルース)に必須なストーリーテリングの要素と重ねられることに留意したい。さらに、宗教的な話はさておいて勝手に飛躍すれば、昔からカントリーと表裏の関係にあるヒム(聖歌)の要素がジョンの歌世界には色濃い。表題もゴスペルっぽい“Keep The Faith”や“Livin' On A Prayer”などを筆頭に、愛と信念を貫いて誠実に生きることを説くボン・ジョヴィは、つまり初めからカントリーやCCMとは親和性が高かったのだ。レーガン政権下の〈イケイケなアメリカ〉を謳歌した連中と見られがちな彼らだが、実は昔から庶民サイドの心情を歌っていたのである。だから、テイラー・スウィフトに代表される新世代のカントリー、ディズニー系ポップス、ドートリーらの〈アメアイ〉産ロック、クリスチャン・ロック……若々しい意匠の裏に純潔志向すら感じさせる昨今の〈アメリカン・スタンダード〉はすべてボン・ジョヴィに似て聴こえる。その音楽がこの先もどのように機能していくか、言わなくてもわかるだろう。

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