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特集

BON JOVI(2)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年11月04日 18:00

ソース: 『bounce』 315号(2009/10/25)

文/鈴木 宏和

迷わず、恐れず、奇を衒わず

  ジョンと、リッチー・サンボラ(ギター)、アレック・ジョン・サッチ(ベース)、ティコ・トーレス(ドラムス)、デヴィッド・ラッシュバウム(キーボード、後にブライアンに改名)の5人によってニュージャージーで結成され、84年に『Bon Jovi』でアルバム・デビューを飾ったボン・ジョヴィ。キッスやラットなどのツアー・サポートで急速に評価と人気を獲得した彼らは、大ヒット“Livin' On A Prayer”を含む3作目『Slippery When Wet』で全米No.1バンドとなり、これを機に世界中にファン・ベースが拡大。80年代後半のロック・シーンに大旋風を巻き起こす。

 が、続く4作目『New Jersey』に伴うワールド・ツアーを終えた90年初頭に、突然の活動休止を発表。全世界37か国、455日間に及んだ過酷なツアーで、肉体的にも精神的にも疲弊していた彼らは、機能不全に陥り、空中分解スレスレの状態になっていたのだ。

 それでも、ジョンとリッチーのソロ活動などを経て2年ほどでシーンの最前線に帰還を果たし、ワールド・ツアーも再開。94年にリリースされたベスト盤『Cross Road』では、全世界で1000万枚を超えるメガ・ヒットを達成する。残念ながらここでアレックが脱退するも、彼らはデビュー前から活動を共にしたメンバーのみでのバンド継続を決意し、ここから〈4人+サポート・ベーシスト〉という布陣となる。

 ジョンが積極的に映画に出演していたこともあり、95年の『These Days』以降はふたたびメンバーのソロ活動が続いたが、99年にバンドとして結集し、2000年の7作目『Crush』にて本格始動。新世紀に向けてのバンドのポジティヴなモードを、“It's My Life”をはじめとするアップリフティングな楽曲群で存分に伝えてくれたのだった。

 そして2001年、ジョンとリッチーが地元ニュージャージーで曲作りをしている最中に、あの〈9.11〉の悲劇が……。アメリカを、明日さえ見えない絶望感が覆い尽くした。しかし、この悲劇を大きな契機に、バンドはその真価を知らしめることになる。

 そう、デビューから20年以上を経て、2000年代後半にふたたび黄金期を迎えた要因を考えてみると、それは彼らが〈時代の気分〉というものを的確に捉え、形にしていたからだと思うのだ。〈9.11〉で、それまでの価値観を完膚なきまでに破壊されたアメリカ、ひいては世界の不安なムードを描き出し、かつそこから明日への希望を見い出して、一歩ずつ前進しようとする不屈の意志を呼び覚ますこと・・それをボン・ジョヴィは、迷わず、恐れず、奇を衒わず、ストレートにみずからの音楽のテーマに据えたのである。実際、2002年に発表された8作目『Bounce』には、直接的に〈9.11〉について言及している楽曲が多かった。

 「その通りだね。特に“Bounce”や“Undivided”といった曲の歌詞に強く表れていると思うんだけど、あの作品は〈9.11〉以降の癒しの過程をベースにした作品だったんだ」。

 そして、2005年の『Have A Nice Day』へと続いていく。ピース・マークが含み笑いしたようなキャラクター・ロゴも印象的なこのアルバムで、彼らは2004年の大統領選挙がもたらした不安や緊張感と共に、一人一人がしっかりと信念を持ち、自分の人生を自分らしく生きていくことの大切さを歌った。

「このアルバムからは、〈Inclusion(=受け入れる、包み込む)〉の意味を汲み取ってもらえると良いんだけどね。みんなどんな状況にあるにせよ、何とか持ち直して人生をやっていかなきゃいけないんだからさ」。

 少々うがちすぎな見方かもしれないが、『Lost Highway』でボン・ジョヴィが古き良きアメリカのルーツ・ミュージック、カントリーにアプローチしたというのは、そうした〈時代の気分〉に拠るところも大きかったのではないだろうか。同作で彼らは、時に牧歌的にも響くオーガニックなサウンドに乗せ、〈祝福すべき未来が必ず来ることを信じよう〉とオプティミズムを提唱している。

 「先が見えず、何が待ち受けているのかわからない道だけど、それでも確実にどこかへ向かっているという興奮がある。〈失われたハイウェイ〉という言葉には、そういう想いが込められているんだ」。

▼オリジナル作以外のボン・ジョヴィの重要作。

▼ジョン・ボン・ジョヴィのソロ・アルバムを紹介。

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