INTERVIEW――NORAH JONES(2)
いままでにないグルーヴ
ドラムにジョーイ・ワロンカー(ベック、REM)やジェイムズ・ギャドソン(マーヴィン・ゲイ、ビル・ウィザース)、ギターにマーク・リーボー(トム・ウェイツ、エルヴィス・コステロ)やスモーキー・ホーメル(ジョニー・キャッシュ、ジョー・ストラマー)、キーボードにジェイムズ・ポイザー(エリカ・バドゥ、ルーツ)と、腕も名もあるミュージシャンたちが集まった。またジェシー・ハリスやセックス・モブのトニー・シェアら以前から親交の深いミュージシャンも加わり、〈ノラ・ジョーンズの新しいサウンド〉が作られていった。『The Fall』――2年10か月ぶりの4枚目のアルバムだ。
「いままで作ってきた3枚だってそれぞれ多少は異なるサウンドになっていたけど、でも同じ親密さがあった。それに比べて、今回はまったく違う新しいサウンドね。特にリズムが強調されているあたりに違いが顕著に出ていると思う。最近はサンティゴールドとかMGMTとか、グルーヴのあるクリエイティヴなものに影響を受けていたりもするので、それの反映ってところかしら。初めの2曲(“Chasing Pirates”“Even Though”)は特に現代的なドラム・ビートを入れて、いままでにないグルーヴを出すことを意図したのよ」。
基本的に詞曲はすべてノラ自身が手掛けているが、ライアン・アダムス、ジェシー・ハリス、オッカーヴィル・リヴァーのウィル・シェフらとの共作曲もある。ノラの曲のなかではこれまででもっともロック的な構造が新鮮な“Young Blood”は、マイク・マーティンなる人物が作詞を手掛けた。
「彼は小説家なの。だから書き方がとても描写的で、ロンドンの風景をはじめ、いろんなシーンが立ち現れる。私が歌ったことのないタイプの曲だし言葉数も多いから、歌うのが難しかったけど、チャレンジするのは楽しかったわ」。
楽しげなサウンドの曲もあるが、全体を通すとダークなトーンの曲がやけに多いことに気付く。そして、いままででもっともエモーショナルな作品であるということにも。
「歌詞はダークかもね、確かに。でも遊び心もあると思うし。あらゆるムードが漂うアルバムだと言えるんじゃないかしら。別にひどくダークな時期を過ごしていたというわけではないのよ。でもここ数年、私的なところでいろいろ変化もあったし、辛い時もあった。そんな時期を経て、より率直に自分の気持ちを表わそうと思うようになったところはあるんでしょうね」。
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