DAVID GUETTA(2)
US勢との交流の狙い
『One Love』における大きなポイントは2つある。ひとつは元デスティニーズ・チャイルドのケリー・ローランドやニーヨ、エイコン、ブラック・アイド・ピーズ、キッド・カディ、ノヴェルなど、急速なクロスオーヴァー化に伴い、刺激的なエレクトロ・サウンドを求めるUSのヒップホップやR&Bのアーティストたちの橋渡し的役割を果たしている点。そしてもうひとつは彼自身がフレンチ・アーティストの先鋒として、USのマーケットへ本格的に進出するという点である。
トランシーなポップ・ダンスから、ブリーピーなシンセが轟くエレクトロ、アクの強いフィジェット・ハウス、オーセンティックでソウルフルなヴォーカル・ハウスなど、トレンドを上手に採り入れながら、本作では彼らしく過剰なまでに暑苦しいハウス・サウンドでフィーチャリング・アーティストたちと熱気溢れる異種交配を繰り広げている。エイコンをフィーチャーした“Sexy Bitch”が全米チャートの57位とUS進出に関しては今後に課題を残したものの(UKでは1位を獲得)、DJに関しては絶賛オファー殺到中でしっかり人気を獲得。また、ケリー・ローランドとの“When Love Takes Over”が7か国でチャート1位を記録するなど、『One Love』は彼のキャリアではもっとも成功した作品となった。また、ブラック・アイド・ピーズの『The E.N.D.』から14週連続で全米1位を記録した“I Gotta Feeling”をプロデュースし、ユニットが新しい世界に飛び出すきっかけを作ったことは、彼にとって何よりも大きな喜びだったはずだ。加速するアーバン勢とエレクトロニック・ミュージックのクロスオーヴァーの震源地として、そしてメインストリームを脅かすフレンチ・ハウス・シーンを支えた鉄人の魅力が凝縮された一枚として、ぜひあなたも本作でデヴィッドの魅力に触れてみてはどうだろう。
▼『One Love』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
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