LONG REVIEW――THE LOWBROWS 『Danse Macabre』 ユニバーサル
ジャスティスなどに代表される世界のロッキン・エレクトロ勢と共振しつつも、その文脈のみに捉われない幅広い音楽性をデビュー・アルバム『For Whom the Bell Tolls』で開陳し、国産エレクトロ・シーンの雄として確かな支持を獲得してきたTHE LOWBROWS。今年に入ってからは、元ポップ・グループのサイモン・アンダーウッドが率いた80'sアヴァン・ファンク・グループ、ピッグバッグのファンカラティーナな名曲“Papa's Got A Brand New Pigbag”のカヴァーを発表して、トライバルなビートや土臭いホーン・フレーズとの意外なまでの好相性ぶりを発揮していた彼らだが、このたびリリースされたミニ・アルバムは、同曲で見せた無国籍なワールド・ミュージック志向をさらに推し進めた、猥雑かつ野蛮な魅力に満ちたダーティー・エレクトロ盤に仕上がっている。〈シャキーラの新曲〉と紹介されても鵜呑みにしてしまいそうなキャッチーさを備えたエキゾティックな歌モノ曲“Oh No”で幕を開け、上述の“Papa's Got A Brand New Pigbag”や、ヒップホップ調のタイトなビートから超絶アッパーなレイヴ・チューンへと変容する“Midnight Pirates”、バルカン発フロア行きのオリエンタル・トラック“Danse Macabre”など、とにかく1曲1曲に盛り込まれたアイデアが実に多彩。それこそピッグバッグやア・サーティン・レイシオ、23スキドゥーといったポスト・パンク~ニューウェイヴ系のバンドが、レゲエやダブ、ヒップホップ、アフリカ音楽などを採り入れてみずからの音楽性を拡張していった道筋を、ニュー・エレクトロ的な手法で辿っているかのようにも見える。いまやJ-Popにも採り入れられるようになり、形骸化した記号として捉えられることも少なくないエレクトロ周辺において、これだけの気骨と創造性に満ちた作品は稀有。こういう異物感をはらんだ傑作にこそ、新たなる音楽への可能性が芽吹いているはずだ。