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特集

FOREVER CAME TODAY 状況の変化と日々の葛藤(3)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年10月07日 18:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/林 剛

創造意欲の高まり

  そうしたなか、マイケルに遅れを取るもソロ・シンガーとして人気を得ていたのが兄のジャーメインだ。弟マイケルへの対抗意識を原動力にソロ活動を始めたとも言われるジャーメインだが、とっくに変声期を終えて大人(男)っぽいシンガーというイメージを売りにしていた兄の存在は、自我が芽生え、背伸びをしたい年頃のマイケルにとっては憧れであると同時に脅威でもあっただろう。しかも73年には長兄ジャッキーもソロ・アルバム『Jackie Jackson』を発表。そこに追い打ちをかけてマイケルの心を乱したのが、73年12月のジャーメインとヘイゼル・ゴーディ(ベリー・ゴーディJrの娘)の結婚だ。生来内気な性格のマイケルは、兄たちが次々と大人の世界に足を踏み入れることに対して恐怖と寂しさを覚えたのか、〈結婚することは音楽活動の妨げになる〉といった考えに達してしまったようで、ジャーメインにはひどく失望したという。何ともひとりよがりな話だが、その後生涯に渡って(結婚するとはいえ)色恋に浮かれることなくストイックに芸を追求していったのは、この時の羨望と裏返しの嫉妬から芽生えた自己肯定を貫くためだったのかもしれない。こうして、思春期のマイケルはさらに自分の殻に閉じこもってしまう。そのせいか、当時のアルバム・ジャケットなどに写るマイケルの表情は物憂げで、笑顔もどこかよそよそしい。

 大人社会への恐怖と憧れ。そんな複雑な気持ちを抱えていたマイケルだが、それゆえに兄たちがJ5として〈自分たちで曲を書いてプロデュースしたい〉と主張しはじめた時には素直に同調していたようだ。ちょうどその頃にはマーヴィン・ゲイが“Let's Get It On”(73年)を出しているが、その明け透けな内容を聴いたJ5は〈自分たちだってああいうセクシャルな曲を歌える!〉と兄弟全員で思っていたという。そんなJ5は、74年にスティーヴィー・ワンダーの“You Haven't Done Nothin'”にバック・ヴォーカルで参加。マーヴィンやスティーヴィーが自分たちと同じレーベルにいながら創造の自由を与えられて作品を制作している現場を目の当たりにして、J5の創造の自由を求める気持ちはさらに高まっていったに違いない。兄のティトは当時こう言っている、「同世代の気持ちを代弁できるのは、歳を取ったプロデューサーなんかではなく若い自分たちなんだ」と。

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