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特集

LONG REVIEW――『UP TO YOU』

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年09月30日 18:00

文/出嶌 孝次



  例えばデビュー当初のマドンナはNYのディスコで流行の〈ヒップホップ〉と呼ばれていた……というのは、さっきまで彼女のベスト盤を聴いてたから書いてるだけだが、かと言って彼女の本質がどこかで変容したわけじゃない。時にポップスは意匠と本質をごっちゃにしてみせるものだから、そこに耳を奪われすぎるのもいかがなものかってことだ。で、MiChiの話。楽曲をいくつか聴けばわかるように、彼女のコアがクラブ・ミュージック的なエレクトロにあるわけではないし、全編を手掛ける松澤友和にしてもそんな狙いはないと思う。だからして、〈エレクトロに留まらずジャンルの枠を超えた~〉とかいう形容はまったくもって陳腐でしかないのだ。

 そんななか、この『UP TO YOU』はMiChiの本質を改めて明快に照らし出すだろう。シングルでお馴染みの楽曲がズラリと並び、ちょうど半数がここでの初出。マドンナ“Holiday”を思わせる幕開けの“MadNesS Vol.1”をはじめ、同じく“Sorry”っぽいキャッチーなエレクトロ・ハウス“Shibuya de Punch”も格好良いが、その歌声のトーンを活かすのはよりソング・オリエンテッドな楽曲だ。乾いたギター・ループに乗った“RaiN”や疾走感のある“Something Missing”、ヴァネッサ・パラディ風の終曲“UP TO YOU”などは、無防備ですらある彼女自身の言葉をまっすぐに伝えてくる。そして、バングルズやシャナイア・トウェインを思わせる唯一のセルフ・プロデュース曲“Oh Oh...”を聴けば、実にオーセンティックな魅力を放つ彼女を発見できるのだ。ますます剥き身になっていくであろう今後の展開にも期待したい。

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