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INTERVIEW――MiChi

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年09月30日 18:00

文/油納 将志


  8月に行われた〈サマソニ〉の3日目、MiChiは〈DANCE STAGE〉のオープニング・アクトとして登場した。本人も後に話していたが、朝イチということもあって果たして観客が集まるかどうか心配されていたなか、いざフタを開けてみるとMiChiを待ち構えるファンでいっぱいに。その光景に奮い立ったのだろう、彼女はペース配分を無視したかのようなアグレッシヴなパフォーマンスで会場の温度を急上昇させていった。

 その光景を見て、ぼくはなんだか胸が熱くなってしまった。2008年10月にリリースしたファースト・シングル“PROMiSE”を皮切りに、シングルにはすべてタイアップが付き、TVの音楽番組やCMにいくつも出演したり、ユニクロの世界キャンペーンのキャラクターにも起用されたりと、MiChiはいきなりトップ・アーティストのような扱いでデビューから駆け抜けてきたと言っていい。大半が洋楽リスナーと思われ、邦楽のチャート上位にランクインするアーティストにはあまり関心を寄せていないだろうと思われる〈サマソニ〉の観客が、そんなMiChiにどんな反応を示すのかが気になっていたが、そんなことはまったくの杞憂でしかなかった。ジャンルの壁を壊したとか、そういう奇麗ごとじゃない。もっと根本的な、ただMiChiの音楽が格好良いという衝動に突き動かされたひとりひとりの人たちが、あの日の光景を生み出したのだと、ぼくは思うのだ。

 9月30日にリリースされたセカンド・アルバム『UP TO YOU』も、同じようにふだんJ-Popしか聴かない、逆に洋楽だけという人や、まったくMiChiを知らなかった人が手にすることだろう。そんな広いレンジのリスナーを受け止めるだけのキャパシティーが、このアルバムにはある。

 「自分のカラーというのはもちろんあるんだけど、ひとつのジャンルにはこだわらない。“PROMiSE”みたいな曲は格好良いけれど、そればっかだと、いくらなんでも飽きちゃうからね」。

 MiChiがそう語るように、アルバムには代名詞となったエレクトロ・サウンドから、インキュバスやオフスプリングが好きというMiChiらしいロック・チューン、アーシーなフィーリングのアコースティック・ナンバー、そしてシンガーとしての成長や新たな一面を垣間見せる正統派バラードまで、さまざまな表情を持つ楽曲が並んでいる。

 「あと、自分で作曲/プロデュースした曲も初めて入れられたのは嬉しかったな。ギターも自分で弾いて、ビートも作って。誰かに作ってもらったメロディーを歌っていると、どうしてもがんばらないといけないところがあるけれど、自分の曲はまったくないから、ラク(笑)。作曲やプロデュースには今後もチャレンジしていきたいな」。

 アルバムに並ぶ多彩な14曲のなかでも、ひときわ心を動かされたのは“Shibuya de Punch”だ。80年代風のエレポップ・サウンドにロックのテイストをプラスした、最近のエレクトロ・サウンドの王道を行くナンバー。世界のどこに持っていっても通用すると強く感じた一曲だ。MiChiらしい英語と日本語をリズミカルにミックスしながら、YMOのようなオリエンタルなフィーリングも漂わせた、〈日本発〉として世界へエクスポートできるクォリティーとなっている。

 「確かに(プロデューサーの)T.O.Mは、世界を見据えながら曲を書いてたのかもね。曲自体は、人がすごく困っているのにどうして助けないんだろうというような光景を渋谷で目にしたことから生まれたんだよね。怒りや悲しみがごちゃまぜになった、わけのわからない感情を叩き付けるように歌詞にした。音も何か事件が起こったみたいにドラマティックで、苦しそうな感じなんだけど、最後はピースフルに終わる。深い曲なんだよね」。

 これまでのシングル曲やカップリングを満載しながら、その魅力を上回る表現力と一面を見せつける『UP TO YOU』。ジャケットのポートレートのように、MiChiというアーティストを包み隠さずに描き出したアルバムだ。    

PROFILE/MiChi

85年生まれ、UK出身のシンガー・ソングライター。2歳から15歳までを神戸で過ごし、ロンドン暮らしを経て18歳の時に帰国。プロデューサーの松澤友和と共に楽曲制作をスタートし、2007年にTHE AAs名義で初音源“Surrender”をコンピに提供する。2008年4月の〈渚・音楽祭〉出演を経て、6月にファイルからファースト・アルバム『MiChi MadNesS』をリリース。同年10月にシングル“PROMiSE”でメジャー・デビューを果たし、今年2月の“ChaNge the WoRLd”、5月の“KiSS KiSS xxx”と着実にシングル・リリースを重ねていく。モデルとしての活動や、4枚目のシングル“YOU”も話題を集めるなか、セカンド・アルバム『UP TO YOU』(ソニー)をリリースしたばかり。

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