第4回――INTERVIEW ALICE IN CHAINS(2)
とても暗い場所から、ようやく微かな光が見える場所まで辿り着いた
――昨日や今日になって始まったことではない。いまの発言は、そういう意味でもあるわけですよね?
ウィリアム「うん。ここに至るまでの歴史というものがあるからね。実は俺自身にしても、ジェリー(・カントレル、ギター/ヴォーカル)と知り合ってから、もうかれこれ10年ほどになるし、何の脈絡もなく誘われたわけではないんだ。そして結果、2006年に俺たちは本物のファミリーになった。そういった進化の過程を、すべてこのアルバムで味わえるはずだと思う。これは言わば、〈いまの自分〉と〈なりたい自分〉の存在を認めたうえでの人間の成長過程というものを、正直に捉えた作品なんだ。バンドはレインという兄弟を失い、俺という弟を得た。同時に俺は家族を得ることになった。これは本当に深い話だよ」
ショーン「しかし、とにかく待ち遠しかったよ。実はアルバムのレコーディングが完了してから、環境面でのことが整うまで、半年近くジッと待ち続けていたんだ。こういうことをやるのには本当に多くのことが関わってくるし、ファミリーを正常に機能させていくためには、周りに加わってくるパズルのピースも正しいものでなくちゃならないからね。実はいま、俺たちの周りで働いてくれている人たちのなかには、かつてのアリス・イン・チェインズに関わっていた顔ぶれもたくさん含まれていてね。そういった意味でも本当にファミリーとして成立しているんだ。正直、俺は、レインが亡くなってからも希望を捨てたことは一度もなかったけども、自分自身の人生の一部が終わったと感じていたのも事実だし、かつてと同じようなことができるようになるとは思ってもみなかった。ファミリーの全員がこのバンドを大切に思ってくれたからこそ、すべてが膨らんでいくことになったんだと思う。俺自身、こんなことになるなんて想像もしていなかった。だからこうしてエキサイトせずにはいられないのも、わかるだろ?」
――ええ、もちろん(笑)。ここでアルバムに関するいちばん基本的なことを訊きたいんですが、『Black Gives Way To Blue』というタイトルにはどういった意味が込められているんでしょうか? 象徴的なアルバム・カヴァーともきっと関連があるんですよね?
ウィリアム「説明するのは難しい。だろ(笑)?」
ショーン「ああ(笑)。数え切れないほどのものが象徴されているし、パッケージのデザインとの関連性ももちろんある。ただ、解釈は十人十色でいいと思う。その人が感じたままで構わないよ。アルバム・タイトルは、単純に言えば収録曲のひとつの表題でもあって、タイトルをどうすべきか決めなければならなくなった時、偶然にも全員がこの言葉が相応しいと感じていたんだ。この楽曲自体もさまざまな解釈が可能なものだけど、〈black gives way to blue(黒が青に道を譲る)〉という言い回しが意味するのは、〈真っ暗な場所から少し明るい場所、少し希望が見える場所へ移っていこうとする〉ということ。それが針の先で突いたような小さな穴であっても、少しでもそこから光が射しているのなら、そこがトンネルの終わりなんだ。実際、俺たちの旅はそういうものだった。とても暗い場所から、ようやく微かな光が見える場所まで辿り着くことができて、その先には期待が膨らんでいる。この表題曲はジェリーが書いたものだけど、そういった意味合いを含んでいるのと同時に、俺たちの最愛の友人への別れの挨拶をカタチにしたものでもあるしね」