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特集

第4回――INTERVIEW ALICE IN CHAINS

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2009年09月30日 18:00

更新: 2009年09月30日 18:01

文/増田 勇一

 90年代のグランジ/オルタナ・シーンの雄が、ヴォーカリストの死という最大の危機を乗り越えて完全復活! 前作から14年という時を経て、みずからの生き様を投影したという新作がいよいよその全貌を表す――。

自分たちの生き様を写したスナップショット

  アリス・イン・チェインズの新作が、素晴らしい。『Black Gives Way To Blue』と銘打たれたこの14年ぶりのオリジナル・アルバムは、故レイン・ステイリー(ヴォーカル/2002年没)の後任にウィリアム・デュヴァールを迎えて再始動を果たしたこのバンドにとっての〈復活作〉ということになる。が、そうした意味合いの重さを抜きにしても、とにかく楽曲面での充実度が半端ではないし、かつてこのバンドを愛してきた人たちの単純ではない思いにも、彼らの歴史をリアルタイムで体験していない世代にも、この音と歌声は唯一無二の説得力をもって響くことになるに違いない。ちょうどアルバム完成後、その発売を前にして早くも全米ツアーを展開中だった8月末、前述のウィリアムと、バンドのオリジナル・メンバーのひとりであるショーン・キニー(ドラムス)がインタヴューに応じてくれた。

――まずはアルバム完成、おめでとうございます。あなた方自身も、ずっとこの瞬間の到来を待ち続けていたわけですよね?

ウィリアム「ありがとう。まさにいま、こうして取材を受けている事実が、俺たちが自信に満ちた状態にあることの証だよ。俺たちはレコード会社と契約する以前に、自分たちで費用もまかないながら、このアルバム制作を始めたんだ。何にも縛られていない状態でね。だから上手くいかなければいつでもプラグを抜くことは可能だったし、万が一そういうことになっていたら、作品がみんなの耳に届くことも、こうして自分たちのいまについて語ることもなかったわけで」


(C)Anna-M. Weber

ショーン「そのとおり。とても長く、オーガニックなプロセスのなかで、小さな出来事がゆっくりと起こり続けて、ようやくこの場所まで来たという感じだよ。このアルバムを作ることは、必ずしも〈やらなくてはいけないこと〉ではなかった。でもそれを実行に移すことにしたのは、これこそが自分たちにとっての真実だと感じられたからさ。簡単なことじゃないのは承知のうえで、それをチャレンジとして受け止め、挑むことにしたんだ」

――あえて訊くまでもないことですが……ある意味、苦痛を伴う作業でもあったはずですよね。

ショーン「うん。愛する音楽をカタチにするという行為によって、プライヴェートなことや苦痛を伴うことを、公の場で話す義務が生じることになるのもわかっていたしね。だから大きな決断だった。でもいまは、こうしてチャレンジを完遂できたことによって俺たち全員が誇らしい気分になれているよ」

ウィリアム「このアルバムを作ることで、メンバー全員にそれぞれ成長する必要があったんだ。そもそも俺がこのグループに招かれたのは、単純に数回のショウをやるためでしかなかった。2006年初頭の段階では、具体的に何回のショウをやるのかもわかっていなかった。ところが、たった数回という話だったはずなのに、いつの間にか2006年のスケジュールがツアーで一杯になり、日本も含めて世界中でプレイすることになった(同年7月、〈UDO MUSIC FESTIVAL 2006〉に出演)。結果、20か国以上を回ったんじゃないかな。プールで泳ごうと誘われたつもりだったのに、ちょっと水から顔を上げてみたら大海で泳いでいるのに気付かされた、という感じだったよ(笑)。俺たちは、そういったロードの生活を経て本物のバンドになったんだ。あの2006年のヨーロッパ・ツアーの間に、ユニットとして固まった。毎日毎日、ライヴと長距離移動を重ねながらいっしょに過ごしているなかで、自然に音楽が出てきて、それがカタチを成していったんだ。もちろん自分たちがライヴ・バンドとしていかにパワフルであるかにも気付かされた。ファンの反応も素晴らしかったしね。それを青信号と受け止めながら前進していくほどに、外側からもポジティヴな反応が得られるようになっていった。このアルバムには、そういった過程で俺たちが経験してきたことが反映されているんだ。いま現在の自分たちの生き様を写したスナップショットと言ってもいい。そういう意味では、これまでのアリス・イン・チェインズの作品と何ら変わらないと思う」

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