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特集

WHITNEY HOUSTON

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年09月24日 19:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/出嶌 孝次

  いささか食傷気味ではあるが、ツカミ程度に書いておこうか。品行方正なイメージのスターがバッド・ボーイ風情の男と結婚し、子供にも恵まれるが、やがてドラッグの渦に溺れて転落していく……え、誰の話? もちろん、ホイットニー・ヒューストンの話だ。2000年1月、彼女がハワイで起こしたマリファナ不法所持事件は、トップ・スターがゴシップ・クイーンへと墜ちていく、いまにして思えば発端にすぎなかった。ちょうどキャリアの晴れやかな第一章に区切りをつけるベスト・アルバム『The Greatest Hits』のリリースを控えていた頃の出来事である。

 司法取引によって起訴は免れ、翌年には所属レーベルのアリスタとも契約を更新したものの、清純なイメージを持たれていた彼女とドラッグの関係が曝されたのは大きかった。92年に結婚した夫のボビー・ブラウンが酒や薬物に起因するトラブルを繰り返す一方、ホイットニーはむしろダメ亭主を支える妻として見られていたからだ。2001年9月に行われたマイケル・ジャクソンのソロ・デビュー30周年記念コンサートに彼女が激ヤセした姿で出演すると、薬物中毒説は一気に真実味を帯びていく。これには〈私は痩せる体質〉と反論した彼女だったが、翌年に発表されたシングル“Whatchulookinat”は、ホイットニー自身もソングライトに加わってメディアや周囲の視線への不満を吐き出しているから、相当追い詰められていたのだろう。ボビーがプロデュースした同曲はアルバム『Just Whitney...』からの先行シングルだったが、同作は彼女の輝かしいキャリアにおいて、過去最低のセールス記録を更新してしまった。

 やがて、ボビーの身内から流出した自宅の写真はさらに大きな話題を呼ぶ。散らかった部屋のテーブルや洗面台には夥しい薬物が散らばり、噂が噂ではなかったことが一目瞭然となったのだ。夫のリアリティーTV番組「Being Bobby Brown」にて(演出もあるのだろうが)セックス中毒のおかしな人というキャラを肯定するに至っては、もう〈どうしちゃったの?〉状態だった。そんな不安定な数年で、彼女の歌手としてのキャリアは完全に停止してしまう。ようやく離婚が報じられたのは2006年。翌年には正式に離婚が成立する。だが、物語には続きが用意されていた。

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