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特集

厚みと華やぎを増す〈ブリット・ホップ〉(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年09月24日 19:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/出嶌 孝次

IRONIK
『No Point In Wasting Tears』
 Asylum UK(2008)
グライム畑で活動を始めながら、“Stay With Me(Everybody's Free)”やエルトン・ジョン使いの“Tiny Dancer(Hold Me Closer)”を大ヒットさせた、現行ブリット・ホップのバランス感を体現したような逸品。ワイリーやティンチー・ストライダー、アルバムが待たれるチップマンクらが大挙参加していて、後から大きな意味も持ちそうだ。

LETHAL BIZZLE
『Back To Bizznizz』
 V2(2007)
モア・ファイア・クルーで活躍したロンドンの番長による2作目。ゴツゴツと熱いラップの勢いはそのままに、ベイビーシャンブルズやクラッシュをネタ使いするなどして新たな意匠にも挑戦している。ケイト・ナッシュと共演した“Look What You Done”も良い。この後はシングル“Go Hard”に続けて、ニュ-・アルバムの到着も待たれるところだ。

SPEECH DEBELLE
『Speech Therapy』
 Big Dada(2009)
ビッグ・ダダから昨年シングル・デビューし、特に派手な動きもなくリリースされたこの初作が、先日のマーキュリー・プライズを獲得したばかり! UK版ローリン・ヒルと呼びやすい雰囲気もあるが、アコースティックなトラックに乗せて穏やかに語りかけるようなフロウの芯には90年代的なある種のコンシャスさが備わっている。名品。

KANO
『London Town』
 679/Warner UK(2007)
ストリーツやディプロ、ダヴィンチェが助力したデビューで話題を撒いたケイノの2作目。ここではわかりやすいグライム感は後退し、クレイグ・デヴィッドとの“This Is The Girl”を筆頭に、まろやかなビートでUS寄りの作風へとシフト。デーモン・アルバーンらの客演も聴きモノか。この後にも作品は出しているけど日本では入手困難……。

TOR
『Beatz International』
 ファイル(2008)
最近はモングレルにも客演していた期待の女傑。世界中のビート職人と組むというテーマのため、楽曲はジャジー系からバンド系まで多様だが、このページ的には、DJワンダーによるグライミーな“Do Get To Know”、女性MCの後輩にあたるエンヴィとパリス・ワンを従えた“Going Home”などアグレッシヴなフロウが映えるUK産品を押したい。

ROOTS MANUVA
『Slime & Reason』
 Big Dada(2008)
レゲエ~ダブという根っこの部分を大事にしながら、UKヒップホップならではの進化と深化を見せてきたヴェテランの最高傑作。トドラTによるグライムホール“Buff Nuff”からメトロノミーと組んだエレクトロ・ポップ、オーセンティックなロウ・ビートなどを無理なく繋ぎ合わせ、軸足を動かさずに新しい音に寄り添うセンスはもう無敵だ。

THE STREETS
『Everything Is Borrowed』
 679/Warner UK(2008)
生音の演奏パートを印象的に組み上げ、歌うような語り口から語るような歌い口までを行き交い、この意味深なタイトル……穏やかな作風をトータル・パッケージしたことで、引退説に拍車を掛けることとなったストリーツの4作目。とか言いつつ、現在は来年のリリースをめざして新作のレコーディングに入っているとのこと。

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